日本における世界建築史の形成 - 東京カレッジ

日本における世界建築史の形成

Matthew MULLANE

私の専門は建築史で、建築物とその背景の研究をとおして、「グローバル・ヒストリー」をめぐる複雑な諸問題を東アジアの視点から捉えなおそうとしています。東京カレッジでの主たる研究プロジェクトは、「世界建築史」の形成を、19世紀後半から20世紀初めの日本の歴史と設計の一領域として歴史化・理論化することです。特に、当時の建築家、科学者、哲学者、帝国日本の官僚が、グローバル・ヒストリーの形成に伴う認識論上の難題に対峙し、解決するために建築物をどのように利用したかに関心があります。たとえば、それほど長い距離と時間にわたる因果関係をどうやって見極めるのか。現在の視点が過去の解釈にどう影響するのか。人種と帝国は個人の世界観にどう影響するのか。そして、どのような教育をすれば、普通の人々がグローバル・ヒストリーのアクターだと自覚できるのか。私の研究では、明治日本の立役者たちがこれらの疑問に答え、祖国である大日本帝国を世界史に位置づける知を生み出すために、新旧の建築物をいかに活用したかを明らかにします。近く発表する論文は、建築の世界史を日本語で編み出そうとした初の試みについて論じています。反覇権主義的な世界史の形成、歴史的事実の収集、日本の知の方法の採用に伴う大きな課題を克服するために必要だった認識論上の交渉に特に関心があります。

現在、本の執筆に加え、日本における初期の「世界」建築観をテーマに複数の論文を書き終えようとしています。その1つはある本に収録される論文で、人種差別的表現を用いて東アジアを考察から排除したヨーロッパの世界建築史を日本が早い段階で受容したことについて書いています。主体性を早くに否定されたがゆえに、明治期日本の美術史家や建築史家はオルタナティブな歴史モデルを作ろうとしました。世界建築史をテーマとした過去の研究としては、日本の世界建築史における太平洋の存在に関する学会発表、メソアメリカの建築への日本人の関心に関する学会発表、起業家ネットワーク、資金調達、世界的なプロパガンダによって「世界都市」を作ろうとして失敗した初期の試みに関する論文などがあります。

 

Output:

(Forthcoming) “A World of Errors: James Fergusson’s Histories and Their Critics in Japan” in World Histories of Architecture: The Emergence of a New Genre in the Nineteenth Century (The MIT Press), edited by Petra Brouwer, Martin Bressani and Christopher Drew Armstrong. “Hendrik Christian Andersen’s World Conscience,” in AA Files 73 (2016), 40-47.

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