グローバルな学術言語としての日本語 | 東京カレッジ

グローバルな学術言語としての日本語

2020.02.13
HANEDA Masashi
羽田 正

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2月5日(水)、昨年10月から東京カレッジに滞在されているエシュバッハ(Viktoria Eschbach-Szabo)先生(ドイツ・チュービンゲン大学)の講演会が開催されました。タイトルは「グローバルな学術言語としての日本語」。多くの人はこれを聞いて「え?」と尋ね返すのではないでしょうか。日本では「グローバルな学術言語」といえば、英語を指すからです。講演後の対談で、月本雅幸先生(人文社会系研究科)がおっしゃっていたように、「研究者は英語で話し、書くことを強く求められる」昨今、日本語を「グローバルな学術言語」として育てるべきだとの先生の主張は、驚きを誘います。詳細はいずれこのサイトにアップロードされる講演のビデオをご覧いただくとして、講演の中で私にとって特に示唆的だった点を一つご紹介します。

それはヨーロッパにおける啓蒙の時代(18世紀)に、異なる言語による情報や見解の‘協奏’によって、新しい独創的な知が数多く生まれたという指摘です。言語によって微妙に異なる見方や価値観が相互に刺激し合うことによって、新たな視点や理解を獲得できたというのです。現代にひきつけて言えば、英語だけによる発表や議論よりも、多言語による意見交換や報告の方がより刺激的であり、高度な知を生み出しうると言うことになります。

おっしゃることはもっともです。英語も含む15の重要言語(日本語もそのうちの一つ)の間での相互翻訳を進めることが重要だとの先生の指摘には大賛成です。日本語話者用の外国語辞書はたくさんあるけれども、外国語話者を対象とする日本語辞書が少ないので、その状況を改善すべきだと言うご意見も首肯できます。

日本と接点を持つ研究を進める人たちの中に、エシュバッハ先生の考えに反対する人はおそらくいないでしょう。問題は、日本と直接関係のない研究を行っている人たち(研究者の世界では、圧倒的多数)が、日本語やその他の言語での交流に関心を持たないという点です。日本に関わる研究者の小さなコミュニティーの中でだけ多言語交流が実現しても、そのコミュニティーが他の大多数のコミュニティーに対して閉じ孤立していたら、世界全体の知の状況はさほど変化しないのです。そこで生まれた新たな知を他のコミュニティーに伝え、さらに大きな知の摩擦を生み出さねばなりません。そのためには、外国語での発表や議論が必須です。それを日本語でのコミュニケーションができるエシュバッハ先生のような海外の研究者に任せていてよいのでしょうか。

私は、日本語話者の研究者も日本語での議論の枠に閉じこもらず、積極的に他の言語で自分の考え方を表明するように努力すべきだと思います。日本語をやめて英語にせよと言っているのではありません。日本語と外国語の両方で考え、発信することが大事だと思うのです。高度な日本語での議論をベースにして、外国語(英語には限りません)で独自の見方を示し、日本語の分からない人たちと意見交換をすることができれば素晴らしいではないですか。この数年、私はグローバルヒストリーの分野でそのような活動を続けてきています。そして、自分なりの手ごたえを感じています。今後もエネルギーの続く限りは、その方向で努力を続けたいと思っています。エシュバッハ先生の講演を聞き、あらためて自分自身の研究活動の意味について考えたことでした。

エシュバッハ先生の講演をお聞きになった皆さんは、どのような感想をお持ちになったでしょうか。特に若い人たちの意見を聞いてみたいものです。よければ、どうぞご意見をお寄せください。

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