お礼 ―素晴らしい人たちとの出会い― - 東京カレッジ

お礼 ―素晴らしい人たちとの出会い―

2024.03.29

東京カレッジは2019年2月1日に生まれました。1枚目の写真は、この日から東京カレッジの兼任となった十倉卓越教授と誕生前後の面倒な事務作業を手伝ってくれた大学本部国際戦略課の職員たちとともに、その記念すべき2月1日に撮影したものです。この時点では東京カレッジ専属の教員や職員は一人もいませんでした。2か月後の4月になって私は大学本部の理事を退任し東京カレッジ長として働き始めました。その時に撮影した2枚目の写真に写っているのは、私の他には二人の副カレッジ長と職員たちで、まだ研究者の姿はありません。

それから5年が経った2024年2月1日の時点では、東京カレッジには専任の教員が4人、特任の研究者(特任助教、特任研究員)が10人、ポスドク研究者が11人の合計25人が所属しています。私や2人の副カレッジ長、十倉先生他5人の卓越教授、長い人は1年間滞在する海外からの訪問教授はその数に入っていません。東京カレッジの活動を支える事務職員の数も10人を超えています。3枚目の写真は2023年の4月に撮影したものですが、4年の間にどれだけ多くの人たちが東京カレッジに集うようになったかがよく分かるでしょう。誕生時は本郷キャンパス内の3つの建物に分散して研究室、会議室や事務室が置かれましたが、今ではそのすべてが一つの建物にまとまっています。海外の機関や研究者からその存在が注目されるようになり、海外からの見学者を迎えたり連携の打診を受けたりすることも多くなってきました。5年前には想像もできなかったことです。

このように東京カレッジが順調に成長し、独り立ちして歩き始めたことを見届け、私は3月末でカレッジ長を退任することにしました。能力が限られた私が東京カレッジのためにできることはすべてやりつくしました。東京カレッジが次のさらに高い段階に進むためには新しいリーダーが必要です。今日が最後の勤務日ですが、今はとてもすがすがしい気持ちに満たされています。

私にとって東京カレッジの5年間は、それまでの30年に及ぶ東京大学での教育研究の経験に勝るとも劣らない濃密で充実した時間でした。ここでたくさんの素晴らしい人たちと出会ったことがその最大の理由です。

東京カレッジの活動を始めてから、対面のイベントで学生や一般市民の方々とお目にかかりお話しすることが格段に増えました。講演テーマなど具体的に示唆を頂くこともあり、私にとっては一般の方々の関心、興味や期待を知るための大切な機会でした。お忙しい中イベントにお出でいただいたり、オンラインの講演会で質問やコメントを下さったりと外から熱心に東京カレッジを応援して下さった皆さんには本当に感謝しています。皆さんあってこその東京カレッジです。これからも東京カレッジの各種イベントをサポートして頂けるとありがたく思います。パンデミックによる規制がなければもっと多くの方々と交流できたはずで、この点だけは心残りです。

様々な学問領域で最先端の研究に取り組む卓越した研究者たちが、数多く東京カレッジを訪れてくれました。歴史学者である私が、例えば海外の高名な細胞・分子生物学者や認知計算神経科学者と学術的な意見交換を行うことは、5年前まではおよそ考えられませんでした。しかし、カレッジの責任者である以上、彼、彼女らと語り合うのを避けるわけには行きません。おかげで多くの新しい知見を得、私自身の視野は大きく広がりました。

博士号を取得したばかりの意欲にあふれた優秀なポスドク研究者たちとの出会いも私に新鮮な刺激を与えてくれました。彼、彼女たちは、国際公募に応募し30倍を超す厳しい競争に勝ち抜いて東京カレッジにやってきました。その強い期待に応えられるように、分野横断型の共同研究を組織したり、他部局の研究者を紹介したり、個別の相談に応じたり、毎週金曜のお茶会で雑談をしたり、とできる限りのことをしました。すると、それらがきっかけになって、新しい研究のテーマや方法を思いついたり、それまで意識しなかった東京大学、さらには日本社会の特徴に思い至ったりと、今度は私の方が彼、彼女たちとの対話から多くを学ぶことになったのです。

数多く開催される東京カレッジのイベントの準備とウェブサイトやメールマガジン、SNSなどによる情報発信はすべて、特任助教と特任研究員、それに担当職員からなるチームの献身的な働きによるものです。ポスドク研究者とそん色ない独創的ですぐれた研究を行っている彼女、彼たちが、東京カレッジの未来を真剣に考えその運営のために自らの時間の半分を費やしてくれているのです。彼女、彼たちの熱い思いに私は何度も勇気づけられました。その積極的な提案から運営のためのヒントをもらうこともしばしばでした。彼女、彼たちには本当に感謝しています。

すぐれた職員との出会いも決して忘れることができません。東京カレッジに所属する海外出身の研究者の多くは日本語を解さず日本の文化にも慣れていません。日本語を話す日本国籍の人たちのために最適化されている各種手続きをこなすためには、職員による説明や手助けがどうしても必要になります。それに加えて、東京カレッジに特有の雇用形態、入出金管理に対応する手続きや広報に関わる事務作業など様々な業務をしばしば英語を使って進めなければなりません。簡単なことではありません。しかし、東京カレッジに配属された職員たちはそれらを見事にやってのけ、研究者たちの厚い信頼を得ています。有能な職員たちの献身的な努力のおかげで、東京カレッジの様々な活動は支障なく展開されてきました。このことはいくら強調してもしすぎることはありません。私はこの5年間このように素晴らしい職員たちと一緒に仕事ができたことを誇りに思っています。

潮田フェローの方々、産業界や官界のリーダー、政治家、外交官、作家、囲碁棋士や音楽家など、国内外の実社会の様々な分野で活躍されている魅力的な方々ともたくさんお会いしました。狭い意味での学術界の外にいらっしゃる方々とお話しすると、彼我の立ち位置の違いに気づき、あらためて学術研究の意味や価値とは何かを考えさせられます。私自身がこれから具体的な研究成果を出すことによって、これらの方々からの期待のこもった問いかけに答えていかねばならないと強く思っています。

他にも、常に東京カレッジのことを気にかけ、手厚くご支援下さった大学の役員や本部職員の方々、すぐれた見識とリーダーシップをお持ちでしっかりと私を支えて下さった副カレッジ長の先生方、各研究分野で世界的な業績を持つ卓越した専任教員たち、面識のない私からの突然の依頼を快く引き受け、イベントで興味深いコメントを披露して下さった学内他部局の研究者の皆さんなど、多くの素晴らしい人たちとの出会いがありました。今こうして振り返ってみると、これらの方々に多大なご協力とご支援を頂いたおかげで、何とかここまで東京カレッジが育ってきたのだということをしみじみと感じます。

私にとって東京カレッジの5年は忙しくはありましたが、新たな充電の期間でした。東京カレッジでの人々との出会いによって得た刺激や知見、それに人々の温かさによって、これまで見えていなかった一つ先の新しい扉が開いたような気がしています。ここで得た多くの経験を生かしてこれから新たな気持ちで自分の研究に取り組みたいと思います。

皆さん本当にありがとうございました。またどこかで皆さんとお目にかかってお話しできる機会があることを楽しみにしています。

2024年3月29日

羽田 正

RECOMMEND

お礼 ―素晴らしい人たちとの出会い―

2024.03.29
HANEDA Masashi

東京カレッジは2019年2月1日に生まれました。1枚目の写真は、この日から東京カレッジの兼任となった十倉卓越教授と誕生前後の面倒な事務作業を手伝ってくれた大学本部国際戦略課の職員たちとともに、その記念…


TOP