デジタルは世界を救うか? : コロナ後の世界 - 東京カレッジ - Page 3

デジタルは世界を救うか? : コロナ後の世界

2020.04.18

コロナ後の世界

多くの国が封鎖などの措置により、感染者追跡が可能なレベルまで有症者を減少させた段階で、各国間の移動も解禁することができるかもしれない。回復者の免疫獲得やその持続期間に関しては、まだ研究段階のようであるが、免疫ができた人は、迅速な抗体検査により自由に移動できるだろう。また、未感染の人もすでに感染者が減った国に入国して、運悪く感染者と接触したとしても、最短時間でそれを知ることができるため、自分自身が感染を拡大させるリスクを大幅に下げられる可能性がある。つまり、世界が鎖国状態から抜け出すための新しいテクノロジーとして、デジタルがコロナから世界を救う可能性があるのだ。

極めて短期間で世界に急速に広がった新型コロナは、政治や社会制度、科学技術と社会の関係など多くの課題も突き付けている。IT利用とプライバシーの問題は、より真剣な議論がなされる必要があるだろう。プライバシーや行動の自由は守りつつ、感染爆発により医療現場を崩壊させないことは言うまでもなく、最重要の課題である。また、第二波、第三波の感染爆発による被害を最小にする戦略を導くためには、疫学モデルによる予測も重要な課題だ。研究者がいろいろな情報を公開しながら正しくリスクを管理し、より良い情報発信に努めてゆく必要がある。

感染拡大を止めるための様々な対策も今後、富める国のみが医療とデジタル技術を独占するのでは、世界の格差は広がるばかりか、コロナや新たな感染症が途上国で拡大すれば、ウイルスはまた必ず戻ってくる。世界が分断されることなく、開かれた世界を持続させるためには、医療やデジタルのインフラが十分でない途上国に対して、他の国が支援することが不可欠である。その意味で、コロナ後の世界は分断ではなく、協調こそがより重要な価値観となる世界になるのではないだろうか

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

1 イタリア、フランス、スペイン、NYなどでは、現時点でも新規感染者数の減り方がかなり遅く、予断を許さない状況が続いている。

2 例えば、一人が発症中に感染させる人数を2.5(R0=2.5)とすると、集団免疫がない状態でn回感染が伝わると、感染者数は2.5のn乗となる。nを20としただけで、9千万人に感染が広がることがわかる。一方、R0が1以下ならば、R0のn乗はnが増えるとゼロに近づく。集団免疫の条件は、免疫を持つ人の割合が(1-1/R0)x100%を超えることである。例えばR0=2.5の時、6割の人に免疫があるとすると、接触者の40%だけが感染しうるので、一人が感染させる人数は(2.5*0.4=1)となり、1のn乗は1なので爆発は起こらない。

3 接触削減の割合などに関しては、単純なモデルでもR0が2.5程度ならば、感染確率を6割枠減でほぼ臨界状態(R0=1)に下がり、8割削減でR0<1となり感染爆発を止められることはすぐに分かるが、より定量的なデータに基づいた予測と情報公開が人々の安心感を高めるだろう。

4 それを実効的に担保するのも、各国の対策や政策の違いで実際に何が起こったのかを日々のニュースも含めて正確に記録保存するためのデジタル技術であろう。

 

RECOMMEND

お礼 ―素晴らしい人たちとの出会い―

2024.03.29
HANEDA Masashi

東京カレッジは2019年2月1日に生まれました。1枚目の写真は、この日から東京カレッジの兼任となった十倉卓越教授と誕生前後の面倒な事務作業を手伝ってくれた大学本部国際戦略課の職員たちとともに、その記念…


TOP