デジタルは世界を救うか? : コロナ後の世界 | 東京カレッジ

デジタルは世界を救うか? : コロナ後の世界

2020.04.18
SANO Masaki
佐野 雅己

著者のプロフィール情報が入るエリアです。著者のプロフィール情報が入るエリアです。著者のプロフィール情報が入るエリアです。著者のプロフィール情報が入るエリアです。

author's profile information.author's profile information.author's profile information.author's profile information.

プロフィール

Profile

この著者の記事一覧

いつまで続く封鎖と鎖国

4月7日、東京を含む日本の7都市に非常事態宣言が発せられ、人との接触を8割削減する要請がなされた。これを書いている4月16日現在、非常宣言は全47都道府県に拡大された。欧州では多くの国が封鎖の真っただ中にある。アメリカでも3億人以上に外出規制が出され今もその状態が続いている。一方、今回の新型コロナの発信源である中国では、2ヶ月半におよぶ武漢封鎖と中国全土での外出制限が終わり、街には人が戻りつつある。感染者数の報告を信じるならば、中国の新規感染者数は日々100人以下に落ち着いており、その殆どが国外からの流入であるため、対外的には一か月前から、ほぼ鎖国状態が続いている。今後、欧州やアメリカでの新規感染者数はピークを過ぎて減少を始め、あと1,2ヶ月後には大幅に減少し、中国のように人々が自宅待機から解放される日が来るだろう。封鎖解除後にも予想される第二波、第三波を抑える方法はあるのだろうか?また、今後当分の間、国外からの流入による感染爆発を避けるため、各国は一種の鎖国状態を続けざるを得ない世界がやってくることも予想される。国境を超えるたびに2週間の隔離が求められる世界は、人の移動に2週間かかった過去の世界に戻ることに等しい。もし、ワクチンや治療薬が開発されるまでこの鎖国と自宅待機の状態が、例えば1年以上にわたって繰り返されるならば、世界経済への影響は甚大であり、コロナ後の世界は今までと全く変わってしまうとさえ言われ始めている。

新型コロナウイルスの封じ込め対策には今のところ、100年前のスペイン風邪の時代と変わらない対策、すなわち患者の隔離、感染経路の追跡と検疫、接触者の待機、社会的距離の拡大、衛生の向上などの古典的方法しかないのが実情である。いったん感染者が指数関数的に増えるいわゆる感染爆発が起こってしまうと、感染経路追跡と接触者の発見(いわゆるクラスター対策)は、聞き取りによる人海戦術では手に負えず、何もしなければ人口の6割程度が免疫を獲得するまで止まらない。止めるための唯一の方法は、自宅待機・休業要請や都市封鎖などの手段であり、市中に広がった感染者が他に感染させる人数(基本再生産数: R0と表される)を1以下に抑えることで爆発を止めるしかない。それが今、世界や日本で起こっていることだ。しかし、ここに来て一筋の光明が見え始めた。デジタル技術の利用が新時代の対策として救世主となる可能性がでてきたのだ。IT技術とプライバシーを保護するアリゴリズムによる、感染者の接触追跡(contact tracing)と先行待機(staying a step ahead)と呼ばれる方法だ。

デジタル接触追跡

前回、アジアに希望があると書いたが、すでにシンガポールなどで試みが始まっている対策でもある。理論的にその方法にどの程度の効果があるのか、英インペリアルカレッジの研究結果が最近Science誌に発表された

この研究グループは、SARSコロナの時から理論的疫学研究を行っており、今回は新型コロナの特徴を取り入れ、この技術の効果について理論的な評価を行っている。新型コロナの感染の仕方は4パターンに分けられる。(感染してから症状が出る前に他へ感染させる場合、症状が出てから感染させる場合、無症状のままであるが感染させる場合、密接感染ではなく環境からの感染の場合である。)この4つの場合について、それぞれの確率や時間遅れを評価し、感染爆発を抑えるための条件を調べている。その結果は衝撃的だ。図1の横軸は感染者の隔離の成功率、縦軸は感染経路(濃厚接触者)の発見と隔離の成功率を表している。赤は感染爆発が起こる領域、緑は爆発が抑えられる領域、黒の実線が臨界条件(R0=1)となる境界線を表している。最も左側の図は、感染者の発見と隔離が3日遅れる場合を表している。殆どの領域が赤いのは、人々が普段と同じ行動を続けていれば、いわゆるクラスター対策をしても感染爆発は、ほぼ避けられないという結果である。感染者を100%発見して、濃厚接触者も100%発見し待機または入院させたとしても、理論的には感染爆発が避けられないということだ。そうなると、もはや感染者がどこにいるかも判らないので、全員を閉じ込める以外に爆発を止めるすべはない。

一方、図1は右側に行くほど、それぞれ2日遅れ、1日遅れ、遅れなしと、隔離までの時間が短い場合の計算結果を表した図である(潜伏期などは考慮されている)。遅れが小さいほど緑色の領域が広がり、爆発を抑えられる領域が広くなっていることがわかる。例えば、遅れがない最も右の図は、感染者の発見率が6割、密接接触者の発見率が6割でも爆発が抑えられることがわかる。すなわち封鎖や待機要請は必要がないということになる。

論文はデジタル接触追跡(digital contact tracing)と呼ばれる方法を使うことで、発見から隔離までの時間遅れを最小化し、封鎖が避けられるのではないかという主張となっている。

図1 L. Ferretti et al., Science, 10.1126/science.abb6936 (2020)より引用。

RECOMMEND

日本研究の今後の課題―私論③

2020.09.18
FACIUS Michael

その三:教室から考えなおす日本研究ーー専門家と市民だけでなく、学生の声に耳を傾けることも極めて重要である。近年の教育学は、学生を変革の主体とした教育モデルを打ち出しており、カリキュラムづくりに学生を…


TOP