持続可能性と社会 - 東京カレッジ

持続可能性と社会

共同研究プロジェクト「持続可能性と社会」は東京カレッジにおいて、持続可能性をめぐる諸課題の社会的側面について研究・議論する場になっています。私たちは学際的な研究グループであり、その目的の一つは、持続可能性と関係するテーマについて、自然科学・工学と人文社会科学との対話を広げることにあります。
なぜ「持続可能性と社会」なのか。人間社会は、持続可能性をめぐってかつてない課題に直面しています。生態学的持続可能性に関する周知の課題(気候変動、資源の枯渇、環境汚染、野生生物の減少など)はもとより、社会的持続可能性にかかわる問題(高齢化、意味の喪失、周縁化、格差の拡大など)もあります。これらの課題は技術的な問題であるだけでなく、本質的に社会的なものです。持続可能性の危機の淵源は人間活動の文脈内で突き止めねばなりませんが、こうした危機は人間のニーズや願望も作用して人間活動のレベルで経験され、解釈されるものでもあります。さらに、より持続可能な社会への移行は、個人として集団として行動する人々のイノベーションに見いだせるはずです。持続可能性の課題は、知識や行動、制度の再構成を求めています。
2022年以降、この研究グループは東京カレッジにおいて、持続可能性と社会の交差領域に関心をもつ研究者が新しい知見を紹介したり、執筆中の論文について意見交換したりする場を提供してきました。読書会を開いて、持続可能性研究における新たな知見について議論してもいます。「持続可能性のための学び」というテーマが特に重要な関心事になっています。持続可能な未来に向けた学びを再考するとはどのようなものか、私たちは文献調査を重ね、「Wild Pedagogies(野生の教育学)」という理念に特に関心を寄せてきました。「Wild Pedagogies」とは、教育者は学びのプロセスをコントロールする必要はなく、自然を学びの師とすることを提唱するものです。環境教育の専門家で、ワイルド・ペダゴジー運動の創始者の一人であるBob Jickling名誉教授が東京カレッジを訪問されたのを機に、こうした関心が高まりました。
私たちの最近の取り組みで最も興味深いプロジェクトの一つが、日本の詩人であり、童話作家、哲学者でもある宮沢賢治の思想と作品がどのような影響を及ぼしたのかを考察する学際的な協働研究です。宮沢賢治の作品は、人間以外の存在から世界を見ることを読者に促して人間中心主義を揺るがし、具体的かつ地域に適した学びのあり方を考えさせます。私たちの学際的グループは岩手県でフィールドワークを行ない、宮沢賢治が教育、美術館・博物館、遺産、地方政府の分野にわたって地域に及ぼし続けている影響を探っています。このプロジェクトをとおして、文学の可能性への理解を広げて、固定化した思考・行動様式を打ち破り、持続可能性への移行に貢献したいと考えています。

今後はこうしたテーマの研究を、次のような取り組みも含めて進めていきたいと考えています。

  • 研究会やセミナー、会議などの共催
  • 持続可能性の課題に関する学際的な共同研究プロジェクト
  • 共同出版を行ない、多様な知見を踏まえて持続可能性に関する新たな視点を提起
  • 持続可能性と社会に関する課題について市民を巻き込んだ対話(①映画上映や参加型・没入型学習体験、②持続可能性に取り組む第一線の活動家と学術分野の学者が相互にお互いのイベントへ参加、③より実践的な場での学術イベント開催など)

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