「プラネタリーバウンダリー」にまつわるいくつかの思い出 | 東京カレッジ

「プラネタリーバウンダリー」にまつわるいくつかの思い出

2021.04.28
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執筆者

武内 和彦

(公財)地球環境戦略研究機関理事長。東京大学未来ビジョン研究センター特任教授

 

私が、最初に「プラネタリーバウンダリー」(Planetary Boundaries)の概念を知ったのは、2009年12月にコペンハーゲン大学が主催しての気候変動に関する国際会議のときであったと思う。この会議には、国際研究型大学連合(IARU)の参加大学から、この概念の主提唱者の一人であるオーストラリア国立大学のウィル・シュテファン教授や2009年にネイチャーに掲載された有名なプラネタリーバウンダリーに関する論文の共著者の一人であるコペンハーゲン大学のキャサリーン・リチャードソン教授らが参加していた。ちなみに、この二人と私は、いまは「ボルボ環境賞」の審査員(ウィルは審査委員長)として一緒している。

ネイチャーの筆頭著者であるヨハン・ロックストローム教授(当時はストックホルム・レジリエンスセンター所長)と懇意になったきっかけは、私が選考専門委員長として2015年のコスモス国際賞にプラネタリーバウンダリーの主提唱者としてヨハンを推薦したことである。年齢がまだ若すぎるのではないかとの意見もあったが、彼はいずれ大きな賞を取るに違いないのでその前にということで、彼が受賞者に決まった。この賞の授賞式は大阪で、その後東京に移動して記念講演が予定されていたが、案の定、この決定の直後に、ドイツの大統領から「ドイツ環境賞」が授与されることが決定した。そのため、彼はストックホルムを出て大阪での授賞式に出席し、とんぼ返りでドイツに向かいベルリンでの授賞式に出席してから再び東京に戻り、東大安田講堂で記念講演を行ったのである。

さて私は、中央環境審議会の会長(現在は、会長代理)として第五次環境基本計画の答申の取りまとめを行った。ここでは、日本の法定計画として初めて、プラネタリーバウンダリーの概念を位置づけ、そのうえで持続可能な開発目標(SDGs)の達成をこの計画の大きな目標に置いたのである。ここでは、環境・経済・社会の統合的向上を目指すことが謳われたが、それぞれを個別に追究するのではなく、まず環境という制約の中で社会の豊かさを生み出し、持続可能な経済成長を遂げるべきとする「プラネタリーバウンダリー」の基本理念の具体化を図ったのである。その具体的な施策として提案されたのが、SDGsのローカル化としての「地域循環共生圏」である。この考え方は、脱炭素・資源循環・自然共生による自立・分散型の地域づくりのあり方を示したものとして、コロナ禍からの復興を目指す持続可能な地域社会のあるべき姿としても注目されている。

 

武内 和彦

1951年和歌山県生まれ。農学博士。(公財)地球環境戦略研究機関理事長。東京大学未来ビジョン研究センター特任教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所上級客員教授などを兼務。専門分野は、地域生態学、環境学、サステイナビリティ学。

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