持続(不)可能なモノたち | 東京カレッジ

(un) sustainable things

持続 (不)可能なモノたち

世界は常に変わっています。ただ、そうやって社会が変わっていく時に、ちょっとだけでも、「こっちに変わったら?」と言えたら。ヒトとヒトとをつなげることで、良い変化を生み出す原動力になれたら。そんな思いから、私たちは今日も東京カレッジで研究を続けています。

今回は、そんな私たち一人一人が、自らの研究を、「持続可能」(サステイナビリティ)というテーマに関連させ、アートとして表現しました。このアート展をきっかけとして、東京カレッジで活躍するメンバーたちの研究内容を少しでも身近に感じてもらえれば嬉しいです。

Researcher

包装と移民の
アイデンティティ

日本から持ってきた包装紙

マレーシア、クアラルンプールの日本人会では、毎年、日本人移住者によるチャリティバザーが開催されます。その中で人気なのが、日本の包装紙です。日本では、贈り物は綺麗な紙に包まれていることが多いとされています。

マレーシアに住む日本人女性の中には、日本から持ってきた包装紙を保管しておき、マレーシアでプレゼント交換をするときに、それで贈り物を包むという人もいました。

美しい紙と、温かい気持ちの、国境を越えた循環といえるかもしれません。

Researcher

包装と移民の
アイデンティティ

日本から持ってきたラップ

マレーシアに住む日本人女性たちが国境を越えて日本から持ってきたのは、台所で使うラップなど、意外と日常的なものでした。

彼女たちは、日本で売っているラップ(上)、クアラルンプールの日本人会で売っているラップ(中)、地元のスーパーで売っているラップ(下)の品質を、細かく区別していました。

異国で暮らす女性の多くにとって、日本食の調理は重要な活動であり、日本のラップの触感や視覚を再現することで、家庭の温かさや、安心感をも再現していました。

一見ありふれてみえる日常品が、移民のアイデンティティに大きな影響を与えている例で、プラスチックの禁止をめぐる議論の複雑さを示しています。

Researcher

Marcin Pawel JARZEBSKI

日本の里山:
社会の再興と崩壊

積極的に 高齢者が里山を蘇らせる(千葉県柏市)

里山とは、山と農地の間にある森のことです。里山の森は、何世紀にもわたって小規模な農業や林業によって発展してきました。

最近では、工業化や都市化が進み、地方の過疎化が進んでいるため、里山を利用する人は少なくなっています。

しかし、最近では、高齢者が一緒に森の用事をしたり、小さなイベントや集会を開いたりして、里山での交流を楽しむことができるようになりました。

Researcher

Marcin Pawel JARZEBSKI

日本の里山:
社会の再興と崩壊

里山の同じ森でもポイ捨てやゴミ捨ての場所になっています(千葉県柏市)

ある人にとっては、森は里山再生の場であり、高齢者が誰かと一緒に過ごしたり、森林管理をしたりすることで充実感を得ることができます。

しかし、他国に比べて廃棄物の適正処理やリサイクルに対する意識が高い昨今、同じ森が不法なポイ捨てや古い家電製品の廃棄の場になっている人もいます。

この問題は、監視カメラや看板、地元の人たちだけでは解決できません。

Researcher

江戸と
サステイナビリティ

大根とヒトの循環

江戸時代というと、環境に配慮した循環型経済の時代だと思われがちです。

私は八百屋で大根を買うたびに、大根が循環型経済の最も象徴的なモノの一つであったことを思い出します。

江戸の町人の排泄物は、農家が集めて肥料にしていました。とても価値があり、例えば一橋家には、年間の生産量に応じて中サイズの大根2000本が支払われていました。

まさに農家の方が言うところの、 「江戸っ子は口で取って尻で出す」ですね。

Researcher

江戸と
サステイナビリティ

奥入瀬渓流の森林破壊

奥入瀬渓流は、東北でも有数の紅葉の景勝地です。

昨秋、この地を訪れた際、パネルに書かれていた「江戸時代後期には、この辺境の地でも森林伐採が行われていた」という記述に驚きました。

18世紀にはすでに、東北の経済成長と開発が進み、一部の天然資源がその限界を超えて開発されていたことがうかがえます。

Link

Researcher

Mark BOOKMAN

アクセスと
持続(不)可能なインフラ

多目的トイレ

ここでは、お年寄りや体の不自由な方など、サポートが必要な方のために、複数の手すりが設置されたトイレを紹介します。

また、トイレのまわりには非常ボタンや、高さの違うトイレットペーパーが備えられ、さまざまな体格の人が使えるようになっています。

このような 「ユニバーサルデザイン」のトイレは、急速に高齢化が進む日本において、将来的に高齢者が自宅の外でも活動できるようにするために役立つと考えられます。

Link

Researcher

Mark BOOKMAN

アクセスと
持続(不)可能なインフラ

閉じられたエレベーター

これは、一時的に停止したエレベータです。

目的地まで別のルートで移動できる人もいるかもしれませんが、短時間の停止でも、エレベータによるアクセスを必要とする利用者にとっては、大幅な遅れにつながります。

このような遅延は、その場にいる人だけでなく、その人の友人や家族、同僚など、その人と一緒に行動している人たちにも迷惑をかけてしまうことになります。

日本と世界の持続可能な未来のために、誰一人として取り残されないようにしなければなりません。

Link

Researcher

人類の過去と
ミュージアムショップ

商品として購入できる記憶と想い出

ミュージアムは芸術品の蒐集と展示を通して人類の過去についての情報を公開するだけでなく、来館者に向けて商品を販売しています。

これは、イラン国立博物館のギフトショップで購入した鉄器時代の「こぶ牛形土器」のレプリカです。

レプリカを購入すれば、この美しい造形物をいつでも自宅で鑑賞できます。

Researcher

人類の過去と
ミュージアムショップ

加速するミュージアムの商業化

公的資金の減少は、商業化の加速を意味しています。

世界中のミュージアムギフトショップでは、マグネット、マグカップ、パズル、プラスチックフォルダー、傘、水筒、スマホケースなど、さまざまな商品が販売されています。

今日ではミュージアムに行かずに、オンラインショップから商品を購入することもできます。

インスピレーションに満ちた便利な商品もありますが、はたして商業化を加速させることはミュージアムを経済的に維持する唯一の方法なのでしょうか。

Researcher

Matthew MULLANE

建築と
再利用の持続性

持続可能な(古い)建築物

新しく建物をつくることによる気候変動への深刻な影響を受けて、一部の建築家は、常に新しい構造物を建設する必要性を再検討し始めています。

その解決策のひとつが「適応的再利用」です。
適応的再利用とは、取り壊されてしまう予定の建物を、新しい持続可能な技術を用いて新しい目的のために改修することです。

これは、これまでの建築の考え方を大きく変えるものです。建築家は、世界で最も偉大な建築物とは、建築家自身のユニークなビジョンを実現するプロジェクトであると教えられてきました。
つまり、適応的再利用に伴う考え方や実践は、これまで「建築的」な行為としては評価されてこなかったのです。

しかし、この状況は変わりつつあります。適応的再利用の初期の例として、リナ・ボ・バルディによるブラジル・サンパウロのSESCポンペイア工場(1977-1986年)を挙げることができます。元々は金属製の樽を製造する工場でしたが、ボ・バルディは建物を解体し、その開放的なフロアプランを利用して、美術展や文化イベントに適したスペースを作りました。この建物は、工場の床の典型的な構造要素をすべて残しています。ボ・バルディは、赤いペンキ、スロープ、水場などの小さな工夫を加えて、この建物を適応的に再利用しました。

Researcher

Matthew MULLANE

建築と
再利用の持続性

持続不可能な(新しい)建築物

建築は飢えています。
建築物は稼働するために大量のエネルギーを消費し、新築時の二酸化炭素排出量は膨大です。2013年から2016年の間に世界で作られた新しい建築物は、全エネルギー使用量の36%、全CO2排出量の39%を占めています。

新築へのこだわりは、日本では特に顕著です。日本では、平均的な住宅は30年しか住まれず、取り壊されます。土地の値段が高いために、著名な建築物でさえも新しく建て替えるために破壊されてしまいます。

日本の一般的な郊外住宅は、大きな工場で製造されたプレハブのユニットを用いて建てられます。製造業者、不動産業者、施工業者、そして購入者の誰もが、建物の寿命が短いことを知っています。住宅メーカーは、この短いサイクルを利用して、環境を犠牲にしてでも利益を最大化しようとしています。

(un) sustainable things

持続 (不)可能なモノたち

世界は常に変わっています。ただ、そうやって社会が変わっていく時に、ちょっとだけでも、「こっちに変わったら?」と言えたら。ヒトとヒトとをつなげることで、良い変化を生み出す原動力になれたら。そんな思いから、私たちは今日も東京カレッジで研究を続けています。

今回は、そんな私たち一人一人が、自らの研究を、「持続可能」(サステイナビリティ)というテーマに関連させ、アートとして表現しました。このアート展をきっかけとして、東京カレッジで活躍するメンバーたちの研究内容を少しでも身近に感じてもらえれば嬉しいです。

包装と移民の
アイデンティティ

日本から持ってきた包装紙

マレーシア、クアラルンプールの日本人会では、毎年、日本人移住者によるチャリティバザーが開催されます。その中で人気なのが、日本の包装紙です。日本では、贈り物は綺麗な紙に包まれていることが多いとされています。

マレーシアに住む日本人女性の中には、日本から持ってきた包装紙を保管しておき、マレーシアでプレゼント交換をするときに、それで贈り物を包むという人もいました。

美しい紙と、温かい気持ちの、国境を越えた循環といえるかもしれません。

日本から持ってきたラップ

マレーシアに住む日本人女性たちが国境を越えて日本から持ってきたのは、台所で使うラップなど、意外と日常的なものでした。

彼女たちは、日本で売っているラップ(上)、クアラルンプールの日本人会で売っているラップ(中)、地元のスーパーで売っているラップ(下)の品質を、細かく区別していました。

異国で暮らす女性の多くにとって、日本食の調理は重要な活動であり、日本のラップの触感や視覚を再現することで、家庭の温かさや、安心感をも再現していました。

一見ありふれてみえる日常品が、移民のアイデンティティに大きな影響を与えている例で、プラスチックの禁止をめぐる議論の複雑さを示しています。

Researcher

日本の里山:
社会の再興と崩壊

積極的に 高齢者が里山を蘇らせる(千葉県柏市)

里山とは、山と農地の間にある森のことです。里山の森は、何世紀にもわたって小規模な農業や林業によって発展してきました。

最近では、工業化や都市化が進み、地方の過疎化が進んでいるため、里山を利用する人は少なくなっています。

しかし、最近では、高齢者が一緒に森の用事をしたり、小さなイベントや集会を開いたりして、里山での交流を楽しむことができるようになりました。

里山の同じ森でもポイ捨てやゴミ捨ての場所になっています(千葉県柏市)

ある人にとっては、森は里山再生の場であり、高齢者が誰かと一緒に過ごしたり、森林管理をしたりすることで充実感を得ることができます。

しかし、他国に比べて廃棄物の適正処理やリサイクルに対する意識が高い昨今、同じ森が不法なポイ捨てや古い家電製品の廃棄の場になっている人もいます。

この問題は、監視カメラや看板、地元の人たちだけでは解決できません。

Researcher

Marcin Pawel JARZEBSKI

江戸と
サステイナビリティ

大根とヒトの循環

江戸時代というと、環境に配慮した循環型経済の時代だと思われがちです。

私は八百屋で大根を買うたびに、大根が循環型経済の最も象徴的なモノの一つであったことを思い出します。

江戸の町人の排泄物は、農家が集めて肥料にしていました。とても価値があり、例えば一橋家には、年間の生産量に応じて中サイズの大根2000本が支払われていました。

まさに農家の方が言うところの、 「江戸っ子は口で取って尻で出す」ですね。

奥入瀬渓流の森林破壊

奥入瀬渓流は、東北でも有数の紅葉の景勝地です。

昨秋、この地を訪れた際、パネルに書かれていた「江戸時代後期には、この辺境の地でも森林伐採が行われていた」という記述に驚きました。

18世紀にはすでに、東北の経済成長と開発が進み、一部の天然資源がその限界を超えて開発されていたことがうかがえます。

Link

Researcher

アクセスと
持続(不)可能なインフラ

多目的トイレ

ここでは、お年寄りや体の不自由な方など、サポートが必要な方のために、複数の手すりが設置されたトイレを紹介します。

また、トイレのまわりには非常ボタンや、高さの違うトイレットペーパーが備えられ、さまざまな体格の人が使えるようになっています。

このような 「ユニバーサルデザイン」のトイレは、急速に高齢化が進む日本において、将来的に高齢者が自宅の外でも活動できるようにするために役立つと考えられます。

Link

閉じられたエレベーター

これは、一時的に停止したエレベータです。

目的地まで別のルートで移動できる人もいるかもしれませんが、短時間の停止でも、エレベータによるアクセスを必要とする利用者にとっては、大幅な遅れにつながります。

このような遅延は、その場にいる人だけでなく、その人の友人や家族、同僚など、その人と一緒に行動している人たちにも迷惑をかけてしまうことになります。

日本と世界の持続可能な未来のために、誰一人として取り残されないようにしなければなりません。

Link

Researcher

Mark BOOKMAN

人類の過去と
ミュージアムショップ

商品として購入できる記憶と想い出

ミュージアムは芸術品の蒐集と展示を通して人類の過去についての情報を公開するだけでなく、来館者に向けて商品を販売しています。

これは、イラン国立博物館のギフトショップで購入した鉄器時代の「こぶ牛形土器」のレプリカです。

レプリカを購入すれば、この美しい造形物をいつでも自宅で鑑賞できます。

加速するミュージアムの商業化

公的資金の減少は、商業化の加速を意味しています。

世界中のミュージアムギフトショップでは、マグネット、マグカップ、パズル、プラスチックフォルダー、傘、水筒、スマホケースなど、さまざまな商品が販売されています。

今日ではミュージアムに行かずに、オンラインショップから商品を購入することもできます。

インスピレーションに満ちた便利な商品もありますが、はたして商業化を加速させることはミュージアムを経済的に維持する唯一の方法なのでしょうか。

Researcher

建築と
再利用の持続性

持続可能な(古い)建築物

新しく建物をつくることによる気候変動への深刻な影響を受けて、一部の建築家は、常に新しい構造物を建設する必要性を再検討し始めています。

その解決策のひとつが「適応的再利用」です。
適応的再利用とは、取り壊されてしまう予定の建物を、新しい持続可能な技術を用いて新しい目的のために改修することです。

これは、これまでの建築の考え方を大きく変えるものです。建築家は、世界で最も偉大な建築物とは、建築家自身のユニークなビジョンを実現するプロジェクトであると教えられてきました。
つまり、適応的再利用に伴う考え方や実践は、これまで「建築的」な行為としては評価されてこなかったのです。

しかし、この状況は変わりつつあります。適応的再利用の初期の例として、リナ・ボ・バルディによるブラジル・サンパウロのSESCポンペイア工場(1977-1986年)を挙げることができます。元々は金属製の樽を製造する工場でしたが、ボ・バルディは建物を解体し、その開放的なフロアプランを利用して、美術展や文化イベントに適したスペースを作りました。この建物は、工場の床の典型的な構造要素をすべて残しています。ボ・バルディは、赤いペンキ、スロープ、水場などの小さな工夫を加えて、この建物を適応的に再利用しました。

持続不可能な(新しい)建築物

建築は飢えています。
建築物は稼働するために大量のエネルギーを消費し、新築時の二酸化炭素排出量は膨大です。2013年から2016年の間に世界で作られた新しい建築物は、全エネルギー使用量の36%、全CO2排出量の39%を占めています。

新築へのこだわりは、日本では特に顕著です。日本では、平均的な住宅は30年しか住まれず、取り壊されます。土地の値段が高いために、著名な建築物でさえも新しく建て替えるために破壊されてしまいます。

日本の一般的な郊外住宅は、大きな工場で製造されたプレハブのユニットを用いて建てられます。製造業者、不動産業者、施工業者、そして購入者の誰もが、建物の寿命が短いことを知っています。住宅メーカーは、この短いサイクルを利用して、環境を犠牲にしてでも利益を最大化しようとしています。

Researcher

Matthew MULLANE


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