【言語とアイデンティティ】第1回:「アイデンティティと『キャラ』」 - 東京カレッジ

【言語とアイデンティティ】第1回:「アイデンティティと『キャラ』」

日時:
2021.11.08 @ 17:00
2021-11-08T17:00:00+09:00
2021-11-08T17:15:00+09:00
【言語とアイデンティティ】第1回:「アイデンティティと『キャラ』」
終了しました
YouTube配信
開催日時 2021年11月8日(月)から17:00以降視聴可能
会場

東京カレッジYouTubeチャンネル

言語 英語(日本語同時通訳有)
要旨

本講演では、20世紀末に日本で生まれた「キャラ」という概念に着目して、言語とアイデンティティの隠れた関係性を明らかにします。英語の「character」を語源とする「キャラ」は、状況に応じて変わる自己の一面を指すことばとして、若者を中心に独自の意味を持つようになりました。

 

キャラの概念が定着して以来、日本社会を分析するにはキャラが不可欠だと思われるようになりました。いま必要なのは、求めても手に入らないego-identityではなく、「キャラ」というバラバラで多元的な自己だという研究者もいます。しかし、さまざまな状況ごとに「キャラ」を意図的に演じ分けることは他人をあざむくことにならないのだという、若者擁護論は、自分のキャラが非意図的に変わってしまうという若者たちの悩みと矛盾します。

 

このような問題は若者たちに限ったことではなく、私たちは皆ある程度、意図中心主義に囚われているわけです。「人間は、スタイルを変えることはあるが、人間自体は状況に応じて変わることなどない」という静的な人間観を持っている人は多くいます。「言語は人間にとって単なる道具であり、話す言語によって話し手が変わることなどない」という道具論的な言語観もよく耳にします。本発表では、文学作品、インターネット上の書き込み、アンケート調査結果の分析を通して、1)人間は、キャラの視点から見ると非意図的に変わることがある、2)その変化は言葉遣いに引き起こされることがある、ということを論じます。さらにこの結論を通して、言語行動を理解するためには、意図性やピエール・ブルデューのハビトゥスという概念を基とした新しい枠組みが必要であることを主張します。

プログラム

登壇者

定延 利之 (京都大学大学院文学研究科・教授)

 

コメント

Hannah DAHLBERG-DODD(東京カレッジ・特任研究員)

 

司会

Viktoria ESCHBACH-SZABO(テュービンゲン大学・教授|東京カレッジ・招聘教授)

主催 東京大学国際高等研究所東京カレッジ
お問い合わせ tokyo.college.event@tc.u-tokyo.ac.jp

Upcoming Events

開催予定のイベント

国際女性デー シンポジウム「国境を越えたフェミニスト運動を考える」

イベント予定シンポジウム/Symposium

2023年3月31日(金)10:00-11:30

東京カレッジのジェンダー・セクシュアリティ・アイデンティティ共同研究会は、国際女性デーにちなんだシンポジウムを開催します。「女性、生命、自由」というスローガンを掲げたイランの抗議運動に注目し、女性を中心とした運動がどのように翻訳・伝播・理解され、国境を超えた連帯を促進しうるかを考察します。

「動物、災害、山――環境人文学再考」(講演者:ハルオ・シラネ教授)

イベント予定講演会/Lecture

2023年4月4日(火)16:00-17:30

日本文化において、人間と動物、人間と山とは、どのような関係にあるでしょうか。そして自然災害との関係は?これらの複雑な関係は、現代にふさわしい環境倫理を生み出すためにどのように役立てることができるでしょうか。本講演会では、人間と人間以外のものの関係を再考する手段として、「災害•アフターライフ•再生 のエコロジー」を提唱するシラネ教授からお話を伺います。

日本の言語政策と学習者アイデンティティの前提 ― 日本人のための英語教育、外国人のための日本語教育の推進 ― (講演者:橋本佳代子)

イベント予定ワークショップ/Workshop講演会/Lecture

2023年4月17日(月) 13:30-14:30

日本の言語政策は、国家、言語、国民が不可分であるという考え方が根底にあり、この考え方が日本の言語政策を形成してきました。本講演では、橋本佳代子博士(クイーンズランド大学)が、日本のいわゆる「英語教育」において学習者のアイデンティティがどのように構築されてきたか、また、海外での日本語教育推進において学習者のアイデンティティがどのように想定されてきたかを論じます。

外来語と日本人のアイデンティティ:「氾濫」と「吸収」?

イベント予定講演会/Lecture

2023年4月19日(水) 17:00 -18:30

日本語は外来語の氾濫によって乱れているのか。それとも、外国語から新しい語彙を吸収することで豊かになっているのか。現代の日本では、そんな議論をよく耳にする。本書『Loanwords and Japanese Identity: Inundating or Absorbed?』は、日本語の語彙借用についての議論を分析することで、言語とアイデンティティの関係を探る。

がん研究 ー ノーベル賞からのインスピレーション(講演者:Carl-Henrik HELDIN教授)

イベント予定講演会/Lecture

2023年4月22日(土)16:00-17:30(15:30開場)

過去122年間において、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和の分野で約1000人の方にノーベル賞が授与されました。これらの受賞者たちの偉大な業績は、様々な研究に多大な影響を与えてきました。本講演では、がんの原因や治療法の解明を目指す研究を取り上げ、ノーベル賞受賞者たちの業績から得られたインスピレーションを語ります。

Previous Events

公開済みイベント

染色体の機能と維持 ー 生命の継承のしくみ(講演者:Camilla BJÖRKEGREN教授)

イベント予定講演会/Lecture

2023年3月10日(金)16:00-17:30

DNAのらせん構造に着目し研究を行うBjörkegren教授を招き、染色体DNAの構造と機能、そしてこれらの特徴が細胞の増殖にどのような影響を与えるのかについてお話を伺います。遺伝物質が二本鎖のらせん状に構成されていることによって、私たちの細胞のアイデンティティと発達がどのように方向づけられるのか、また、本当にこれらによって方向づけられているのかという点についても議論します。

アジアと世界の男性像:社会言語学からみた変遷(講演者:平本美恵准教授)

イベント予定ワークショップ/Workshop講演会/Lecture

2023年3月1日(水)15:00-16:00

本発表では、社会言語学の視点からみて、アジアとそれ以外の地域における男性像の変遷を探究します。社会文化的なステレオタイプと男性性イデオロギーとの関係、また、ジャンル、スタイル、メディアがこれらの概念に対する私たちの理解をどのように形成しているのかに焦点を当てます。Aghaの著作を中心に、メディア化 (mediatization)とレジスター化(enregisterment)の理論的概念、および人物像(figures of personhood)の概念を用いて、3つのケーススタディを分析します。

メアリ・ウルストンクラフト フランス革命の歴史を見つめ、書き残した英国の女性思想家(講演者:Pierre SERNA教授)

イベント予定講演会/Lecture

2023年2月27日(月)16:00-17:30

一般的には、フランケンシュタインを近代化の怪物的なメタファーとして描いたメアリ・シェリーの方が、母親のメアリ・ウルストンクラフトよりも馴染みがあるだろう。また、メアリ・シェリーを出産してウルストンクラフトが亡くなったことは、歴史家には知られている。しかし、研究者の間では、ウルストンクラフトの2つの著書、エドマンド・バークに対する返答としての『人間の権利の擁護』と『女性の権利の擁護』は、極めて高い評価を得ている。本講演では、長いあいだ日の目を見ることが無かったウルストンクラフトのもう1つの著書、『フランス革命の歴史的・道徳的見解とそれがヨーロッパにもたらした影響』を紹介する。これはフランス革命に関する最初の偉大な歴史書の一つであり、新たな叙述と歴史的認識論を提起している貴重な本である。

日本と感性ロボット:性別と感情をプログラミングするとは?(講演者:Jennifer ROBERTSON教授)

イベント予定講演会/Lecture

2023年2月20日(月)16:00-17:30

日本における多くの人型ロボットは、アルゴリズム構築のために大幅に単純化され、ステレオタイプ化された性別、感情、性質を備えつけられている。多数のアルゴリズムで構成される人工知能(AI)は、パターン認識のタスクには有用だが、人間の設計者が抱いている日常社会の偏見を永続させ、再生産することもある。本講演では、このような人型ロボットと、ロボットの設計がセキュリティを含む他の産業に及ぼす影響について議論する。

北インドのウッタラカンド地方の若者に学ぶ生き方(講演・ドキュメンタリー映画上映)

イベント予定講演会/Lecture

2023年2月8日(水)16:00-17:30

北インドのウッタラカンド地方において、環境と社会経済的危機に対応し、日常的に社会活動を行いながら、若者たちがどのように生き延びようとしているのか紹介します。Jane Dyson准教授によるドキュメンタリー映画「Spirit」も上映します。

英国のインド太平洋地域への傾斜―2022年に何が変わったのか?(講演者:Alastair MORGAN教授)

イベント予定講演会/Lecture

2023年2月3日(金)16:00-17:30

2021年、英国政府は防衛、安全保障、開発、外交政策における「インド太平洋への傾斜」を発表した。本講演では、英国の政治的混乱や経済的困難、ロシアのウクライナ侵攻の影響などが展開した2022年の変化を検討する。


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