東京カレッジオンライン講演「朝貢圏最後の盛会」講師:葛兆光 - 東京カレッジ

東京カレッジオンライン講演「朝貢圏最後の盛会」講師:葛兆光

日時:
2020.06.08 @ 16:00 – 17:00
2020-06-08T16:00:00+09:00
2020-06-08T17:00:00+09:00

東京カレッジオンライン講演「朝貢圏最後の盛会」をうけて、葛兆光、杉山清彦両氏による対談が行われました

2020年6月8日に、葛兆光教授による講演「朝貢圏最後の盛会」をうけて、同教授と本学総合文化研究科の杉山清彦准教授との間で対談が行われました。この講演と対談は、もともと今年3月に開催される予定でしたが、新型コロナ・ウイルスの感染拡大を受けて延期となり、この度それぞれ収録動画(講演)とライブ配信(対談)のかたちでようやく実現したものです。

杉山准教授は、『大清帝国の形成と八旗制』(名古屋大学出版会、2015年)の著者であり、満族史・清史の専門家です。とりわけ清の制度や政治文化を、女真=満族をも含む広い中央ユーラシア世界に位置付けて研究されています。杉山准教授は対談の冒頭で、葛教授の講演は、乾隆帝傘寿祝典を中国史・アジア史・グローバルヒストリーの多重的観点から考察することによって、歴史を複眼的に解釈し、評価することに成功しているとの感想を述べました。

続いて、両氏は、「祝典はなぜ北京ではなく、まず承徳で行われたか」、「祝典に不在の存在についてどう考えるべきか」をめぐり、対話を深めていきます。式典が承徳で始まり北京で終わったことは、まさに清朝皇帝の「中央ユーラシア世界の君主」と「中国王朝の天子」としての二重性格を表すものでした。両氏はともに中央ユーラシア世界の視点から祝典の意味を考えることの有効性を認めますが、葛教授は、アジア史の視点をあえて重視した理由として、東西の軸のみではなく、南北の軸にも注目すべきだからだと説明しました。杉山准教授は、祝典に姿が見えなかった存在としてロシアとジュンガルを取り上げ、「朝貢圏」とはどのようなものだったのかとあたらめて問題を提起しました。これを受けて、葛教授は、非公式の冊封国であるルソン(現フィリピン)、オランダやイギリス等の国々も同様に祝典に招かれなかったことを指摘しました。その理由は、清朝とこれらの国々との関係を考えると明らかです。清に服従を示す国々のみを招待したのです。葛教授によれば、そこから乾隆帝に「天朝中心」的な態度が依然として根強いことが分かるとのことです。

日本語・中国語逐次通訳が入ったこともあり、予定した一時間はあっという間に過ぎました。最後に両氏は、議論を十分に展開できなかった「19世紀への展望」や「近代史の始まり」といったテーマについて、将来あたらめて意見を交わす機会があることを期待すると述べ、対談を締めくくりました。

当日は、150人に近い方々が対談のライブ配信をご視聴くださいました。見逃した方々には大変申し訳ありませんが、対談は当日配信のみです。葛教授の講演動画の方は、引き続き東京カレッジのYouTubeチャンネルで視聴できますので、ぜひ本ページまたは東京カレッジYouTubeチャンネルでご覧になってください。

終了しました
対談のみYouTubeライブ配信
開催日時 2020年6月8日(月)16:00-17:00
会場

東京カレッジYouTubeチャンネル (https://youtu.be/g4u3BFSNvRg

言語 中国語・日本語(逐次通訳付)
要旨

大清帝国:盛世の危機
1790年に承徳から北京にかけての一帯で催された乾隆帝傘寿祝典は、18世紀末アジアの東側における最も重要な歴史事件であり、朝貢圏最後の盛会でもあった。本講演では、中国、アジア、そしてグローバルな視点から、中国史、アジア史、グローバル・ヒストリーにおいて同一祝典はなぜ異なる意義を示すのかを議論する。我々は現在、一体どのような角度から、どのような基準をもって一つの歴史事件を評価するのか。

プログラム

【講演】
東京カレッジYouTubeチャンネルにて現在視聴可能
https://youtu.be/av3fpo_E2r4

【対談】杉山 清彦(総合文化研究科准教授)
東京カレッジYouTubeチャンネルにて当日ライブ配信(https://youtu.be/g4u3BFSNvRg
事前に録画公開中の講演をご覧の上、当日ライブをご視聴下さい

講師プロフィール

葛兆光: 1984年北京大学大学院修士課程 (古典文献学)修了、1992年に清華大学教授(歴史学)、2006年に復旦大学特別招聘教授。京都大学(1998年)、東京大学(2015年)、プリンストン大学(2011~2013年)、シカゴ大学(2015年)客任教授。東アジア、中国の思想史・文化史・宗教史を研究。

杉山清彦 : 東京大学総合文化研究科准教授。2000年大阪大学で博士(文学)学位を取得。専門は大清帝国史。とくに八旗制を中心に,マンジュ(満 洲)人王朝という観点から,帝国の形成・発展過程とその構造を研究している。

主催 東京大学国際高等研究所東京カレッジ

Upcoming Events

開催予定のイベント

暗黒の遺産に光を:日本における戦時外国人労働者の慰霊碑(講演者:Andrew GORDON教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年4月26日(金)14:00-15:30 JST

戦時外国人労働者の死を追悼する慰霊碑は、遺産に関連する「暗黒」(dark)という言葉の二つの意味を思い起こさせる。歴史上の悲劇的な出来事の追悼と、この歴史についてあまり知られていない、ほぼ隠されている慰霊碑の重要性である。2つの意味で「暗黒」であるこれらの場所で伝えられるメッセージは何か、検討する。

ホモ・サピエンスの起源と台頭(講演者:Jean-Jacques HUBLIN教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年5月9日(木)14:00-15:30

人類の進化は、古代の系統の多様化によって特徴付けられており、さまざまなアフリカの集団が、ホモ・サピエンスの”現代的な”形態の出現を形成してきた。「緑のサハラ」時代に、アフリカの集団の移住が促進されたが、ホモ・サピエンスの拡大と環境要因はほとんど関係がない。ホモ・サピエンスの拡大により、現地の人口が入れ替わり、文化は大きく変容し、結果的に今日も世界の環境を形成し続けているヒトという唯一の種が広がったのである。

グローバルヒストリー史家のアーカイブとは何か?(講演者:Martin DUSINBERRE教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年5月10日(金)10:30-12:00

本講演では、アジア各地域と太平洋水域を航行した「山城丸」の軌跡を追いながら、19世紀後半、ハワイや東南アジア、オーストラリアで働くために日本を離れた移民たちの生活を革新的な視点から考察する。これらの物語は、入植者植民地主義、労働史、資源採掘に関する環太平洋の歴史研究を新たな方法で結びつける。本講演では、非伝統的な、実物性の高いアーカイブをもとに、グローバル・ヒストリーの記述における方法と記述者の立ち位置に関する重要な問題を取り上げる。

永久凍土を考える(講演者:Sabine DULLIN教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年5月14日 (火)16:30-18:00

本講演では、居住する先住民コミュニティにとって自然で意味のある土地であった永久凍土が、いかに科学的問題として発見されたのか検討する。そして、21世紀初頭、ヤクーツクなど北極圏の準州における主権の模索において、永久凍土がどのように政治的意味を帯びたかを論じる。

「西洋」という虚構とその仮想的同一性:人類学的差異について(講演者:酒井直樹教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年5月17日(金)14:00-15:30

近現代世界の国際的な景観は、近世における「ヨーロッパ」の出現以来、人類学的差異への投資によって形成されてきた。ヒューマニタスとアントロポスを区別するこの差異は、事実的な規範というよりも、むしろ規制的な理念として人類の行く道を導く予期的なものである。それは、ヨーロッパ/アジア、西洋/東洋、白人/有色人種といった二項対立を統合し、複雑な帰属関係を育む。本講演では、ヨーロッパ文化、西洋文明、有色人種を排除した人種にみられる白人性のアイデンティティ・ポリティクスについて掘り下げる。しかし、真の帰属意識は依然として仮定のものであり、非ヨーロッパ的、非西洋的、非白人的なものとの対比を通してのみ実現される。

21世紀の中央銀行(講演者:Luiz Awazu PEREIRA DA SILVA教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年5月29日 (水)15:00-16:30 JST

21世紀の中央銀行は、5つの岐路に直面している(1. インフレとその不透明性の再現、2. 気候変動、3. 不平等、4. デジタル金融イノベーション、5. 人工知能)。これまで、中央銀行は課題に直面した際、分析的思考を強化し、適切にリスクを均衡させ、最善の道を選択してきた。現在、中央銀行が直面する新たな課題は、中央銀行がそれらの挑戦的な影響を慎重に特定し、分析する必要があることを示唆している。

日本における同族経営医療法人(講演者:Roger GOODMAN教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年5月30日(木)14:00-15:30

日本では、病院の約80%とクリニックの約90%が私立であり、これらのうち約75%が同族経営である。本講演では、日本の医療制度の運営全体の文脈における同族経営医療法人の発展と意義を説明し、先行研究でまだ明らかにされていない部分に注目する。

ザ・サロン ー 東大教授との対話シリーズ シーズン2

イベント予定対話/Dialogue

2024年6月7日以降毎週金曜日 順次公開(17:00以降視聴可能)

東大の文系の卓越研究者をゲストに迎え、東京カレッジの島津直子教授がホスト役を務める対談シリーズ新企画。専門分野の壁を超えた対話を繰り広げます。
収録はキャンパス内の某カフェで、コーヒーを片手に行われました。隣の席に座った気分で、分野の異なる専門家によるリラックスした会話に耳を傾けてみませんか?
今までにないゲストの新たな一面がみられる、魅力の新企画です。

Previous Events

公開済みイベント

デジタルフロンティアの強化:サウジアラビアのサイバーセキュリティへの道(講演者:Muhammad KHURRAM KHAN教授)

イベント予定共催/Joint Event講演会/Lecture

2024年4月24日(水)15:30-17:00 JST

本講演では、サウジアラビアが企業や個人をサイバー脅威から守るためのICTインフラの取り組みを紹介する。サイバーセキュリティ能力を再評価するサウジアラビアの取り組み、デジタルで安全な経済ビジョンへの投資、地域のリーダーとしてだけではなく、集団的サイバーセキュリティの世界的パイオニアとして自国を位置づけるための戦略的枠組みなどについて議論する。

日本と中国におけるモンテスキュー「法の精神」専制主義問題の受容(講演者:Anne CHENG教授)

イベント予定共催/Joint Event講演会/Lecture

2024年4月18日(木)14:00-16:00

モンテスキューの『法の精神』 (De l’Esprit des lois)から引用された最も有名な言葉のひとつに「中国は専制国家であり、その原理は恐怖である」がある。本講演は、現代の文脈に流されて結論を急ぐ前に、モンテスキューの思想と最も有名な著作が明治日本、そして後期帝政中国でどう受容されていたか考察することを提案する。

想像的体験としての博物館展示(講演者:Leslie BEDFORD教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年4月17日(水)10:30-12:00 JST

博物館は本来、訪問者のためのものであり、展示はユニークなコミュニケーション手段です。分極化が進むアメリカにおいて、展示はどのように多様な公衆の想像力と関わり、同時に人類共通の感覚にインスピレーションを与えることができるでしょうか?

財産権の剥奪は なぜ必要か(講演者:Frank UPHAM教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年4月15日(月)17:00-18:30 JST

世界銀行、アメリカ政府、そして事実上すべての学者が、「財産権は市場経済のインセンティブ構造の中心にある」、「自由で強固な市場は、財産権が尊重される場合にのみ繁栄することができる」という点で一致している。しかし、繰り返されてきた事例はその逆を意味する。急速な経済成長を実現し、成長がもたらす社会的利益を実現するためには、財産権は剥奪されなければならない。

ガンディーと(人権の)体制(講演者:Vinay LAL教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年3月25日(月)17:30-19:00

本講演ではLAL教授は、まず、西洋における「権利」の概念と権利に関する語りの概念の変遷、また、権利に関するガンディーの考え方、権利の概念に関する彼の哲学的、倫理的、政治的疑問、そして人新世に対する彼の予見について説明する。

国際女性デーイベント: 芥川賞受賞作家 村田沙耶香氏を迎えて

イベント予定対話/Dialogue講演会/Lecture

2024年3月18日(月)17:00-18:30 JST

東京カレッジ ジェンダー・セクシュアリティ・アイデンティティ共同研究会は、芥川賞受賞作家 村田沙耶香氏を迎え、国際女性デーを記念したウェビナーを開催します。 小説「コンビニ人間」(2016)で第155回芥川賞を受賞した村田氏に執筆経験やインスピレーションについて聞き、社会におけるジェンダーとセクシュアリティの規範、またそれらが私たちの世界をどのように形作っているのかについて再考します。


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