新任メンバー・インタビュー:ポストドクトラル・フェローYen Yen Sally RAHAYU - 東京カレッジ

新任メンバー・インタビュー:ポストドクトラル・フェローYen Yen Sally RAHAYU

2022.04.21
Tokyo College Blog

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このシリーズでは東京カレッジの新任メンバーを紹介します。今回は4月よりポストドクトラル・フェローに着任したYen Yen Sally RAHAYUさんにお話を伺いました。

東京カレッジへようこそ!ご自身のバックグラウンドと、研究テーマについて教えてください。

化学者としての教育を受け、学際的な研究に強い関心を抱いています。私の研究活動は、地域資源の価値、人間の健康や行動、そしてそれらを結ぶ関連性を中心としています。これまでに高血圧を抑制する健康効果の高い二次代謝産物を生成する日本産のカビの発酵過程を調査しました。博士論文では、地域資源の探索を続け、インドネシアの異文化間の健康習慣の文脈における薬用植物(伝統的な生薬)の生物多様性の利用に焦点を当てました。その際に民族植物学、社会学薬学、行動学などの定量的・定性的なアプローチを用いています。そして東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻のポスドクフェローとして、ブータン東部で利用されていない野生の食用果物の多様性を評価する民族植物学的研究に従事しました。 その他、東南アジア諸国の食塩摂取量およびコールドチェーンが国民健康改善に及ぼす影響の評価においては人間生態学の調査に貢献し、日本の海洋プラスチック汚染に関するプロジェクトでは構造方程式モデリングを用いた環境保護行動の定量分析に取り組むなど、学際的な研究プロジェクトに携わってきました。また、生物多様性の利用を媒介する研究にも取り組んでいます。グローバルな薬草のバリューチェーンにおける薬用植物の種の同定のため「DNAバーコーディング」技術の採用を検討することにより、薬用植物の技術と規制の側面においてのインターフェイスを調査しました。

現在の研究プロジェクトについて教えてください。

薬用植物の生物多様性の価値を、媒介の側面に着目して調査し続けています。現在の研究は、薬用植物の種の同定・認証にDNAバーコード技術を採用することを検討した最新の研究から発展したものです。DNAバーコードは、ゲノムの標準化された部分から採取した短い遺伝子配列で、生物試料を種レベルで識別するために使用することができます。私は、薬用植物の文脈におけるDNAバーコードの利用という観点から、ナレッジ・コモンズ(知識コモンズ)のグローバルガバナンスについて研究しています。ナレッジ・コモンズとは、情報、データ、コンテンツといったいわゆるデジタル資源を、利用者のコミュニティが共同で所有し、管理することを指します。ナレッジ・コモンズが物理的な共有資源と異なる点は、デジタル資源が非可逆的であることです。DNAバーコード(配列データ、関連するメタデータ、生物試料を含む)はナレッジ・コモンズの一種です。ナレッジ・コモンズを創造し利用するためにステークホルダーが集団で行動することは、コストを最小限に抑え、リスクを共有するなど、関係者全員に潜在的な利益をもたらすものです。しかし、DNA バーコーディングのための制度的な取り決めが、グローバルな状況においてどのように集団行動を促進しうるかに関しては、まだ理解が不足しています。また、このような共有のコモンズは、地域社会への社会的影響はもちろん、「メガ生物多様性」を有する途上国(例:インドネシア)の生物多様性に与える影響も不明なままです。私は、薬用植物のDNAバーコーディングの事例を通して、資源ガバナンスやインフラ管理などのDNAバーコードのコモンズの特性が、DNAバーコーディングの取り組みに向けてグローバルな参加を促進するか、またどのように促進するのかを調査したいと考えています。さらに、生物多様性や地域社会の社会的側面への影響も検証する予定です。薬用植物のDNAバーコードコモンズのガバナンスを理解することは、生物多様性の保全と持続可能な利用、ひいては将来の社会にとって重要な意味を持つと考えます。

東京カレッジ在中に成したい目標は何ですか?

学際的な共同研究プロジェクトに参加することは、身の引き締まるような貴重な経験だと感じています。社会が抱える多面的な問題に対して、複数の視点に基づく解決策が必要であることに私自身気づかされました。東京カレッジは、学際的な共同研究や国際的な研究環境を重視する日本でも数少ない教育機関であり、他の教育機関と比べても非常にユニークな存在です。自分の研究成果を発表するだけでなく、学内外のさまざまなバックグラウンドを持つ研究者とともに、人類の持続可能で包括的な未来の実現に向けた議論に参加することが、私の東京カ レッジでの目標です。

 

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