東京カレッジ講演会「小さな国の大きな力:国際関係におけるアイスランドの役割」講師:グドゥニ・トルラシウス・ヨハネソン - 東京カレッジ

東京カレッジ講演会「小さな国の大きな力:国際関係におけるアイスランドの役割」講師:グドゥニ・トルラシウス・ヨハネソン

日時:
2019.10.24 @ 15:00 – 16:30
2019-10-24T15:00:00+09:00
2019-10-24T16:30:00+09:00

東京カレッジ講演会「小さな国の大きな力:国際関係におけるアイスランドの役割」が開催されました

2019年10月24日、グドゥニ・トルラシウス・ヨハネソン氏(アイスランド共和国大統領)による講演会「小さな国の大きな力―国際関係におけるアイスランドの役割」が開催されました。歴史学者としての経歴も持つヨハネソン氏は、アイスランドの歴史と現在について紹介し、小さな国家が国際舞台でどのような影響力を持てるのかについて論じました。

繋がっている歴史~アイスランドの誕生~

司会の羽田正教授(東京カレッジ長)による趣旨説明に続き、ヨハネソン氏は、アイスランドの物語が世界文学に貢献したことや、火山の噴火が世界史に与えた影響を例に挙げ、一つの地域で起こることがほかの国や地域に影響することを説明しました。次に、ヨーロッパにおけるナショナリズムに影響を受け、デンマークから独立して1918年にアイスランドが主権国家になった経緯、さらに第二次世界大戦を経て1944年に共和国になり、戦後は国連の中でも一番小さな国の一つとしてユニークな役割を果たしてきたことを紹介しました。

世界の舞台で活躍するには

ヨハネソン氏は、人口わずか35万人のアイスランドが、国益を守りながら世界に意見を述べる立場を確保するためにどのようにジレンマを乗り越えてきたのかを解説しました。漁業権を巡ってイギリスとの間に勃発したタラ戦争(1958年~1976年)では、冷戦下の国際情勢や世論を戦略的に利用し、より大きな国であるイギリスに勝利しただけではなく、結果として200海里排他的経済水域の設定という世界的な漁業のルールを作ることにも貢献しました。更に、アイスランドは、同じく小さな国であるバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の独立を支援し、友好関係を築いてきました。アメリカのような超大国の意思決定を直接コントロールすることはできなくても、国際舞台で小さな国の意見が聞かれるということを充分に証明しました。

小さな国の模範として

ヨハネソン氏は講演会の中で、弱い国が強い国の主張を受け入れざるを得ない、というギリシャの哲学者トゥキディスが論じた現実主義よりも、実際の国際関係は複雑であり、小さな国でも影響力を持てると強調しました。アイスランドはまた、男女平等に関して、過去11年間ジェンダー平等性のインデックスにおいて上位であり、世界をリードしてきました。今後もあらゆる分野で小さい国の模範となっていくことが期待されます。ヨハネソン氏は、「われわれの世界はグローバル化されており、国家の間のつながりが深まっています。これ自体はすばらしいことですが、すべてが同じ文化であってはつまらないわけです。アイスランド、日本にはそれぞれの文化、文学があり、それらが世界の文化のモザイクの一端を担い、それをつなぐということが重要である」と語りました。

質疑応答

質疑応答セッションでは、ナショナリズムに傾倒する国々が増えている21世紀の国際関係はどのように展開していくのか、コソボや台湾など地域の独立や紛争に関してアイスランドがどのような立場を取っているのか、少子高齢化が進む日本の離島についてどのような政策をとっていくことが望ましいのか等、学生や研究者から様々な質問があがりました。ヨハネソン氏は、都市化が進むアイスランドでは、脆弱なコミュニティーに対して財政的な支援を行っていることや、AIの技術を用いてアイスランド語を維持するための試みが行われていることなどを紹介しました。

 

 

終了しました
開催日時 2019年10月24日(木)15:00-16:30(14:30開場)
会場

東京大学福武ラーニングシアター (情報学環・福武ホール 地下2階)

申込方法 事前申込制。160名(先着順、参加無料)
言語 英語(日英同時通訳有)
主催 東京大学国際高等研究所東京カレッジ
お問い合わせ tcevent@graffiti97.co.jp

Upcoming Events

開催予定のイベント

クラウドソーシング・ヘルスケアの未来(講演者:Simo HOSIO教授)

イベント予定講演会/Lecture

2023年10月3日(火)16:30-18:00

人工知能は、近い将来ヘルスケアに革命を起こす可能性を秘めています。本講演では、さまざまなデジタル技術の組み合わせ、メンタルヘルスに関する現在進行中の事例研究、そして、クラウドソーシングを用いた大規模拡張が可能なオンライン実験における文化の違いや人的要因に光を当てたHosio教授のデジタルヘルスに関する研究を紹介します。

現代韓国の文化と民主主義(講演者: KIM Hang教授)

講演会/Lecture

2023年10月24日(火)10:30-12:00

いわゆる"K"を冠した韓国発の文化が日本のみならずグローバルに人気を博している。今回の講演ではこうした現状を、1990年代後半からの韓国における政治・経済・社会変動において理解することをテーマに据える。それにより現代韓国における文化と民主主義の関係、そして何かと荒波が止まない日韓関係を考える際のささやかなヒントを共有するきっかけになることを願いたい。

世界文学と翻訳 「The Bankruptcy」翻訳出版を記念して

シンポジウム/Symposium

2023年10月26日 (木)19:00-21:00 JST (ロンドン: 11:00-13:00; サンパウロ: 7:00-9:00am; ニューヨーク: 6:00-8:00am)

小説「The Bankruptcy」(Júlia Lopes de Almeida著)の新訳は、受賞をきっかけに世界に知られるようになりました。翻訳出版を記念し、本シンポジウムでは、担当翻訳者、編集者、また、研究者らが世界文学の現状とブラジルや日本、そして他国における翻訳が果たす役割を議論します。

Previous Events

公開済みイベント

東京カレッジ&MbSC2030共催 シリーズ 未来の科学技術への取り組み「未来のモビリティ:人間とサービスの関係性について」

イベント予定講演会/Lecture

2023年9月21日(木)15:00-16:30

「Mobility=自由に動けること」は、すべての人々が根源的に希求すること。ウーブン・バイ・トヨタは、人、モノ、情報の3つの「Mobility」の実現を目指す。それは、安全でスマートな、人に寄り添うモビリティをすべての人に届けることである。本講演では、最先端の車両ソフトウェアプラットフォームによる集約型システムについて解説をする。

脱炭素化とサステナビリティのためのエネルギー転換 (講演者:Yiguang JU教授)

イベント予定講演会/Lecture

2023年9月13日(水)15:30-17:00

気候変動や環境の持続可能性に対する社会的関心が高まる中、今後数十年のうちに「化石燃料エネルギー」は、再生可能な電力による「電子エネルギー」へと変化していくだろう。本講演では、再生可能エネルギーの貯蔵や断続的な生産といった課題に対処するための3つの方法: 非平衡エネルギーと化学変換、材料製造、アップサイクルに焦点を当てる。また、脱炭素化と持続可能性の観点から、これらの改革がもたらす利点についても議論する。

インド太平洋地域における抑止力と外交のバランス(講演者: Bill EMMOTT 潮田フェロー )

イベント予定講演会/Lecture

2023年7月25日(火)13:00-14:30(開場 12:30)

「今日のウクライナは明日の東アジアになりうる」と岸田首相は警告している。しかし、これをどのように防ぐことができるのか?日本やフィリピンを含むアメリカの同盟国は、抑止力のネットワークを構築しようとしている。これはどのように外交と結びつけられるだろうか?抑止は同時に挑発にもなりうるのか?本講演では、こうしたジレンマについて解説し、探っていく。

出版記念「複雑な絡まり合いーフィリピン研究」

イベント予定講演会/Lecture

2023年7月20日(木)16:00-17:30

地域研究という分野では、その植民地時代の起源、研究者の視点や立場性と方向性について、時折論争が起こります。Plural Entanglements: Philippine Studiesの出版を記念した本イベントでは、人類学者のDOCOT博士がこうした議論とフィリピン研究の包括性について語り、BARRETTO-TESORO博士が先住民の視点を用いた革新的な章を紹介します。

言語・文化・思考はどのように関係しているか(講演者:今井むつみ教授)

イベント予定ワークショップ/Workshop講演会/Lecture

2023年7月18日(火) 16:00-17:00

本講演では、言語、文化、知覚、認知がさまざまな領域でどのように相互作用しているかについて議論します。講演の最後には、このようなプロセスを経て、文化的アイデンティティがどのように形成されるかを考察します。


TOP