東京カレッジ・シンポジウム 「世界」とは何か? ―哲学・歴史・文学・宗教を/から考え直す― - 東京カレッジ

東京カレッジ・シンポジウム 「世界」とは何か? ―哲学・歴史・文学・宗教を/から考え直す―

日時:
2019.07.10 @ 17:00 – 19:00
2019-07-10T17:00:00+09:00
2019-07-10T19:00:00+09:00

東京カレッジ・シンポジウム「『世界』とは何か? ―哲学・歴史・文学・宗教を/から考え直す―」が開催されました

2019年7月10日、東京カレッジ・シンポジウム「『世界』とは何か?―哲学・歴史・文学・宗教を/から考え直す―」が開催されました。伊達聖伸准教授(総合文化研究科)が司会を務め、パネリストとして羽田正教授(東京カレッジ)、中島隆博教授(東洋文化研究所)、沼野充義教授(人文社会系研究科)、藤原聖子教授(人文社会系研究科)が登壇しました。

司会の伊達聖伸准教授によるシンポジウムの趣旨説明に続き、第1部では東京大学所属の4人のパネリスト達から、それぞれが専門とするディシプリンにおいて「世界」が指すものは何かが紹介されました。

まず、羽田正教授は、世界史、比較歴史学を専門とする立場から問題を提起し、「新しい世界史」を提唱しました。
次に、中島隆博教授は、中国哲学、日本哲学、フランス哲学、比較哲学を専門とする立場から「世界各地の哲学の総和」という意味で理解されてきた世界哲学の今後の展望について話しました。

続いて、ロシア・ポーランド文学専門で、日本文学を含め広く文芸評論家として活躍する沼野充義教授は、理念、現実、実践としての世界文学について説明しました。
最後に、宗教学専門の藤原聖子教授は、「世界宗教」概念について紹介し、ヨーロッパモデルの普遍性が前提となっている世界宗教史を書き直す必要性を論じました。

シンポジウム第2部では、フロアからの質問を交え、翻訳の問題や「日本発」の人文学についてパネリスト達が意見交換を行いました。海外の人々や理系の専門家を交えて議論をした場合、どのような可能性や壁があるのかという点も、今後の課題として議論されました。

終了しました
開催日時 2019年7月10日(水)17:00-19:00(16:30開場)
会場

東京大学・山上会館大会議室(本郷キャンパス) ※両日共通

申込方法 事前申込制。120名(先着順、参加無料)
言語 日本語 (Japanese language only)
主催 東京大学国際高等研究所東京カレッジ
お問い合わせ tcevent@graffiti97.co.jp

Upcoming Events

開催予定のイベント

地球の未来への多様な視点とエコソフィーの役割(講演者:Zaini Ujang博士)

イベント予定講演会/Lecture

2025年7月11日(金)10:30-12:00

地球の健康(プラネタリーヘルス)を実現するためには、科学的な解決策だけでなく私たちの文化や行動の根本的な変容が必要です。本講演では、マレーシアで各省の事務次官を歴任した講師が、個人の価値観と社会システムの両方に働きかける包括的なアプローチを紹介します。政策や社会の枠組みに「エコソフィー(生態哲学)」を組み込むことの重要性を、日本と北欧の事例を通じて明らかにします。そして、気候変動問題への取り組みにおいて、水やエネルギー分野のNGO・大学・研究機関を含む非政府アクターが果たす大きな役割に光を当てます。

日韓の知識共同体を考える(講演者:梁 一模 教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年7月16日(水)15:00-16:30

江戸時代以来、日本と韓国の間では、知識の交流が持続的に行われてきた。20世紀には植民地支配という時期もあったが、知的交流はむしろ活発さを増してきた。本講演では、藤原惺窩と姜沆、山崎闇斎と李滉、古学派と丁若鏞、福沢諭吉と兪吉濬といった日韓の知識人による交流の事例を振り返りながら、今後の日韓知識共同体の可能性を考えたい。これまで東アジア共同体の構想は、ナショナリズムの強化という「東アジア的逆説」に直面してきたが、本講演はその困難を乗り越えるための一つの手がかりを探る試みでもある。

環境正義における感覚の理論(講演者:Mukul SHARMA教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年7月23日(水)15:00-16:30

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった人の五感は私たちの世界の捉え方や関わり方を形作り、環境体験や文化的慣習に深く関わります。一方で、手触りやにおい、味を社会的に構築する「感覚の政治(sensory politics)」はしばしば社会階層を強化し、特定の集団を環境的な「他者」として疎外します。本講演では感覚の「環境性(environmentality)」に注目し、それが差別的な社会構造の中で不平等をどのように固定化しているかを考察します。感覚に関する規範が不正義をいかに支えているかを問い直すことで、環境正義の新しい概念を提案します。それは、感覚的次元と社会的次元を統合し、カースト制社会において環境・権力・実体験が複雑に絡み合う関係性を捉え直す試みです。

コーヒー × サステナビリティ × 気候変動(講演者:Catherine TUCKER教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年7月30日(水)15:00-16:30

コーヒーは、社交性、覚醒、そして生産性と結びつけられる、世界で最も人気のある飲み物のひとつです。しかし、コーヒーの生産は環境の悪化、農村部の貧困、そして社会的不平等を徐々に引き起こしてきました。現在では、気候変動、市場の不安定性、経済的不確実性によって、その生産が脅かされています。
この講演では、中米のコーヒー生産者を対象とした長期的な調査に基づき、異常気象をはじめとしたさまざまな不安の中で、コーヒーの品質や社会経済的な幸福、そして環境の持続可能性を向上させようとする生産者たちの取り組みについて検証します。また、消費者の役割、認証制度の影響、そして気候変動に強いコーヒー生産を支援するためのアプローチについても議論します。

Previous Events

公開済みイベント

旧約聖書は王国滅亡をどう語ったか:危機と自然をめぐる3つの言説(講演者:Thomas RÖMER教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年5月22日(木)13:00-14:30

紀元前587年のエルサレムの陥落・ユダ王国の滅亡に関連して、旧約聖書(ヘブライ語聖書)には自然や環境に対する異なる言説が見られます。 本講演ではドイツの社会学者アルミン・シュタイルの分析にならい、国家的危機を前にした人々の姿勢を 1) 預言者(危機の後に人間、自然、動物が調和する楽園のような未来が訪れると考える)、2) 官吏(自然災害を神の裁きと捉え、環境に関心を払わない)、3) 祭司(現在の儀式につながる神話的な過去を構築し、人間と自然の調和をめざす)に類型化して読み解きます。生きとし生けるものとの共存について、聖書は私たちに多くのことを教えてくれるでしょう。

ブリュッセル効果への対応:日本企業はEU-AI法にどう備えるべきか4

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion講演会/Lecture

2025年5月12日(月)17:30-18:30

本ウェビナーは、パブリック・コンサルテーション(公開アンケート)のポイントを解説し、国内の関心のある人たちが意見を出すための参考となる情報を提供することを目的としています。
 
EUの規制動向がもたらす「ブリュッセル効果」や日本への影響について理解を深める機会としてAI関連技術の開発・提供・流通に関わる企業、研究機関、開発コミュニティの参加者のご参加をお待ちしております。

世界文学を超えて(講演者:William MARX教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年5月8日(木)10:30-12:00

少なくとも19世紀以降、世界文学は現実のものとなった。テキストは大陸や文化を越えて旅をし、あらゆる言語から翻訳され、世界中の大学で教えられ、新たなグローバルな規範を形成している。これほど自由に、どこにいても好きな作品を読むことができる時代はかつてなかった。あるいは、そう思えるかもしれない。しかし、それは本当の自由なのでしょうか?単なる心地よい幻想にすぎないのでしょうか?この一見無限に広がる文学の交流には、どのような境界があるのか。本講演は、その限界を探り、文学への新しいアプローチを提案することを目的とする。それは、まったく新しいテキストの読み方、あるいは、かつて存在し忘れ去られた方法かもしれません。
ようこそ、「世界の図書館」へ!

平等な権利と不平等な現実: 日本における法とジェンダー平等(講演者:Frank UPHAM教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年5月7日(水)10:30-12:00

日本は、同レベルの諸外国と実質的に同じように男女差別を禁止しているにもかかわらず、ジェンダーギャップ指数においては146カ国中118位で、ドイツより111位、アメリカより103位も低い。なぜなのか? 日本の文化は、女性が家でおとなしくしていることを求めているのだろうか? もしそうなら、なぜ女性の大学卒業率は男性より高いのか? なぜ女性の労働参加率は高いのか? 女性たちが雇用差別訴訟を起こし、勝訴するのはなぜか? 本講演ではこれらを考察し、その理由について暫定的な--極めて暫定的な--見解を述べる。

ネイチャー・ベースド・マーケットの設計と拡大(Beatrice WEDER DI MAURO教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年4月23日(水)15:00-16:30

カーボンマーケットやネイチャー・ベースド・マーケットは、信頼性の低さ、高コスト、規模の限界に悩まされており、必要とされる水準には程遠い状況である。本講演では、Beatrice Weder di Mauro教授が、Estelle Cantillon教授とEric F. Lambin教授と共同開発した新しい市場デザインを紹介する。そこでは、自治体など行政区が大規模なプロジェクトを提供し、投資家は土地の所有権を付与することなく、炭素および生物多様性の『配当』を生み出す株式を購入する仕組みになっている。これにより、市場価格は需要を明らかにし、流動性を高める。これらはクレジットベースのシステムと比較して、このアプローチはコストを削減し、信頼性を高め、長期的なコミットメントをサポートする。本講演は、今日の市場を阻む核心的な問題に取り組み、真の環境影響力をもって規模を拡大する信頼できる道筋を提供する。

「来館者中心」の博物館が意味するもの(講演者:Leslie BEDFORD教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年4月22日(火)14:30-16:00

モノから人への移行を意味した「Being about Something to Being for Somebody(何かについてから誰かのためへ)」という表現は、1999年に『Daedalus』誌に掲載されたアメリカの博物館に関するステファン・ヴェイルの論考の印象的なタイトルである。この表現は数十年を経てもなお、博物館界で共鳴を呼んでいる。それは、博物館が学芸員が定めた情報や機関の目的を優先する在り方から、来館者の体験やより広い地域社会を重視する方向へと変化してきたことを象徴しているからである。ただし、その実践には課題も伴ってきた。
本講演では、長年にわたり博物館の専門家および博物館学の教育者として活動してきたレスリー・ベッドフォード教授が、ヴェイルの言葉の意味を考察し、それがどのように博物館において実践されてきたかについて検討する。ベッドフォード教授が日本で訪れた博物館の事例に加えて、来館者中心の実践に関して、日本の博物館専門家や研究者との一連のオンライン対話を通じて得られた議論の成果を紹介する。そして「来館者中心」という考え方が、今日において、そしてこれからの時代に何を意味しうるのか問う。


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