「西洋」という虚構とその仮想的同一性:人類学的差異について(講演者:酒井直樹教授) - 東京カレッジ

「西洋」という虚構とその仮想的同一性:人類学的差異について(講演者:酒井直樹教授)

日時:
2024.05.17 @ 14:00 – 15:30
2024-05-17T14:00:00+09:00
2024-05-17T15:30:00+09:00
「西洋」という虚構とその仮想的同一性:人類学的差異について(講演者:酒井直樹教授)

終了しました
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開催日時 2024年5月17日(金)14:00-15:30
会場

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申込方法 事前申込制
言語 英語(日本語同時通訳)
要旨

近現代世界の国際的な景観は、近世における「ヨーロッパ」の出現以来、人類学的差異への投資によって形成されてきた。ヒューマニタスとアントロポスを区別するこの差異は、事実的な規範というよりも、むしろ規制的な理念として人類の行く道を導く予期的なものである。それは、ヨーロッパ/アジア、西洋/東洋、白人/有色人種といった二項対立を統合し、複雑な帰属関係を育む。本講演では、ヨーロッパ文化、西洋文明、有色人種を排除した人種にみられる白人性のアイデンティティ・ポリティクスについて掘り下げる。しかし、真の帰属意識は依然として仮定のものであり、非ヨーロッパ的、非西洋的、非白人的なものとの対比を通してのみ実現される。

プログラム

講演者

酒井直樹(東京カレッジ 招聘教員、コーネル大学名誉教授)

コメンテーター

中島隆博(東京大学東洋文化研究所 教授)

司会

Hannah DAHLBERG-DODD(東京カレッジ 特任助教)

講師プロフィール

コーネル大学アジア研究科名誉教授。2021年7月に退職するまで、アジア研究学科、比較文学科で教鞭を執る。比較文学、インテレクチュアル・ヒストリー、翻訳研究、人種主義とナショナリズムの研究といった分野で多くの著書がある。主な著書は:The End of Pax Americana:The Loss of Empire and Hikikomori Nationalism(日本語:『パクス・アメリカーナの終焉:帝国の喪失とひきこもりナショナリズム』(デューク大学出版、2022年)、『ひきこもりの国民主義』(岩波書店、2017年)、『日本/映像/米国―共感の共同体と帝国的国民主義』(青土社、2007年)、『日本思想という問題――翻訳と主体』(岩波人文書セレクション 2012年) 、 『死産される日本語・日本人 「日本」の歴史―地政的配置 (講談社学術文庫)』、『過去の声―一八世紀日本の言説における言語の地位』(以文社、2002年)など。Sandro Mezzadraとの共編 “Translation”(「翻訳」(2014年)、Hyon Joo Yooとの共編The Trans-Pacific Imagination『環太平洋の想像力』)(World Scientific、2012年)、The End of Area (『地域の終焉』(positions asia critique特集号、デューク大学、2019年)など、編著書も数多くもつ。韓国語、中国語、英語、スペイン語、日本語の5ヶ国語による多言語シリーズ「TRACES」プロジェクトの創刊編集者を務めた経験を持つ。

主催 東京大学国際高等研究所東京カレッジ
お問い合わせ tokyo.college.event@tc.u-tokyo.ac.jp

Upcoming Events

開催予定のイベント

ブリュッセル効果への対応:日本企業はEU-AI法にどう備えるべきか5

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion講演会/Lecture

2025年7月28日(月)12:00-13:00

本ウェビナーでは、2025年7月に最終版が、2025年8月2日から適用が開始される予定であるCoPについて解説し、日本企業が特に留意すべき重要なポイントについて概説します。

EUの規制動向がもたらす「ブリュッセル効果」や日本への影響について理解を深める機会としてAI関連技術の開発・提供・流通に関わる企業、研究機関、開発コミュニティの参加者のご参加をお待ちしております。

広島AIプロセス(HAIP)報告枠組みとは?―日本発のグローバルAIガバナンス最前線

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion講演会/Lecture

2025年7月28日(月)14:00-15:30

本ウェビナーでは、G7広島サミットで発足した広島AIプロセス(HAIP)とは何か、その報告枠組みの意義について解説します。また実際にHAIPにレポートを提出した企業の実務担当者をパネリストに迎え、「なぜHAIPへの参加を決めたのか」「透明性レポートや情報開示の望ましい在り方とは」「日本法との関連や期待」などについて議論します。
基盤モデル、生成AI、AIエージェントなどを活用するグローバル企業の技術者や法務担当者はもちろん、日本国内のみでAIを活用する企業、さらには中小企業やスタートアップ企業にとっても、HAIPについて理解を深める機会となります。ぜひご参加ください。

コーヒー × サステナビリティ × 気候変動(講演者:Catherine TUCKER教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年7月30日(水)15:00-16:30

コーヒーは、社交性、覚醒、そして生産性と結びつけられる、世界で最も人気のある飲み物のひとつです。しかし、コーヒーの生産は環境の悪化、農村部の貧困、そして社会的不平等を徐々に引き起こしてきました。現在では、気候変動、市場の不安定性、経済的不確実性によって、その生産が脅かされています。
この講演では、中米のコーヒー生産者を対象とした長期的な調査に基づき、異常気象をはじめとしたさまざまな不安の中で、コーヒーの品質や社会経済的な幸福、そして環境の持続可能性を向上させようとする生産者たちの取り組みについて検証します。また、消費者の役割、認証制度の影響、そして気候変動に強いコーヒー生産を支援するためのアプローチについても議論します。

マクロ経済政策から見た日本経済への処方箋(講演者:清滝 信宏教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年8月27日(水)15:00-16:00

現在の日本経済はトランプ関税の影響、食品価格の高騰、少子高齢化、財政や環境の持続性への不安など、様々な問題に直面しています。世界的に著名なマクロ経済学者の清滝信宏教授と国際金融の最前線で活躍するエコノミストの中空麻奈氏をお迎えし、日本経済の課題を参加者と共に考え、マクロ経済政策の面から解決策を探ります。マクロ経済学や政策設計に関心をお持ちの方をはじめ、多くの皆さまの積極的なご参加・ご質問をお待ちしています。

Previous Events

公開済みイベント

環境正義における感覚の理論(講演者:Mukul SHARMA教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年7月23日(水)15:00-16:30

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった人の五感は私たちの世界の捉え方や関わり方を形作り、環境体験や文化的慣習に深く関わります。一方で、手触りやにおい、味を社会的に構築する「感覚の政治(sensory politics)」はしばしば社会階層を強化し、特定の集団を環境的な「他者」として疎外します。本講演では感覚の「環境性(environmentality)」に注目し、それが差別的な社会構造の中で不平等をどのように固定化しているかを考察します。感覚に関する規範が不正義をいかに支えているかを問い直すことで、環境正義の新しい概念を提案します。それは、感覚的次元と社会的次元を統合し、カースト制社会において環境・権力・実体験が複雑に絡み合う関係性を捉え直す試みです。

日韓の知識共同体を考える(講演者:梁 一模 教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年7月16日(水)15:00-16:30

江戸時代以来、日本と韓国の間では、知識の交流が持続的に行われてきた。20世紀には植民地支配という時期もあったが、知的交流はむしろ活発さを増してきた。本講演では、藤原惺窩と姜沆、山崎闇斎と李滉、古学派と丁若鏞、福沢諭吉と兪吉濬といった日韓の知識人による交流の事例を振り返りながら、今後の日韓知識共同体の可能性を考えたい。これまで東アジア共同体の構想は、ナショナリズムの強化という「東アジア的逆説」に直面してきたが、本講演はその困難を乗り越えるための一つの手がかりを探る試みでもある。

地球の未来への多様な視点とエコソフィーの役割(講演者:Zaini Ujang博士)

イベント予定講演会/Lecture

2025年7月11日(金)10:30-12:00

地球の健康(プラネタリーヘルス)を実現するためには、科学的な解決策だけでなく私たちの文化や行動の根本的な変容が必要です。本講演では、マレーシアで各省の事務次官を歴任した講師が、個人の価値観と社会システムの両方に働きかける包括的なアプローチを紹介します。政策や社会の枠組みに「エコソフィー(生態哲学)」を組み込むことの重要性を、日本と北欧の事例を通じて明らかにします。そして、気候変動問題への取り組みにおいて、水やエネルギー分野のNGO・大学・研究機関を含む非政府アクターが果たす大きな役割に光を当てます。

旧約聖書は王国滅亡をどう語ったか:危機と自然をめぐる3つの言説(講演者:Thomas RÖMER教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年5月22日(木)13:00-14:30

紀元前587年のエルサレムの陥落・ユダ王国の滅亡に関連して、旧約聖書(ヘブライ語聖書)には自然や環境に対する異なる言説が見られます。 本講演ではドイツの社会学者アルミン・シュタイルの分析にならい、国家的危機を前にした人々の姿勢を 1) 預言者(危機の後に人間、自然、動物が調和する楽園のような未来が訪れると考える)、2) 官吏(自然災害を神の裁きと捉え、環境に関心を払わない)、3) 祭司(現在の儀式につながる神話的な過去を構築し、人間と自然の調和をめざす)に類型化して読み解きます。生きとし生けるものとの共存について、聖書は私たちに多くのことを教えてくれるでしょう。

ブリュッセル効果への対応:日本企業はEU-AI法にどう備えるべきか4

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion講演会/Lecture

2025年5月12日(月)17:30-18:30

本ウェビナーは、パブリック・コンサルテーション(公開アンケート)のポイントを解説し、国内の関心のある人たちが意見を出すための参考となる情報を提供することを目的としています。
 
EUの規制動向がもたらす「ブリュッセル効果」や日本への影響について理解を深める機会としてAI関連技術の開発・提供・流通に関わる企業、研究機関、開発コミュニティの参加者のご参加をお待ちしております。

世界文学を超えて(講演者:William MARX教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年5月8日(木)10:30-12:00

少なくとも19世紀以降、世界文学は現実のものとなった。テキストは大陸や文化を越えて旅をし、あらゆる言語から翻訳され、世界中の大学で教えられ、新たなグローバルな規範を形成している。これほど自由に、どこにいても好きな作品を読むことができる時代はかつてなかった。あるいは、そう思えるかもしれない。しかし、それは本当の自由なのでしょうか?単なる心地よい幻想にすぎないのでしょうか?この一見無限に広がる文学の交流には、どのような境界があるのか。本講演は、その限界を探り、文学への新しいアプローチを提案することを目的とする。それは、まったく新しいテキストの読み方、あるいは、かつて存在し忘れ去られた方法かもしれません。
ようこそ、「世界の図書館」へ!


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