長らく、言語と政治がどのように交差するか(その結果として言説理論や言説分析)に焦点を当てた研究をしてきた。最新の著書 Birth of the State: The Place of the Body in Crafting Modern Politics(OUP、2021年)では、身体という視点を手がかりに、近代を特徴づける二つの政治的な形――国家と権利主体――について、長い時間の積み重ねや当たり前とされてきた考え方を一つひとつ剥ぎ取るように問い直している。身体を通して、国家と権利主体がどのように互いを形づくりあってきたのかを、17世紀までさかのぼって探究している。ここでは二つの大きな「革命」に注目している。第一の革命は科学革命で、人間を宇宙の中心から追い出し、物質・空間・身体という概念そのものを変えた。第二の革命は法と政治の革命で、人間を再び近代的権利の枠組みの中心に位置づけた。
東京カレッジでの研究では、『Birth of the State』で触れた「人工性」という概念をさらに発展させていく。17世紀ヨーロッパにさかのぼり、その概念の系譜をたどりながら、それがどのように近代的な政治的行為主体の形として発展し、私たちの世界を形づくったのかを明らかにしていく。この行為主体は、20世紀的な意味での「環境」を破壊すると同時に、人工知能の誕生へとつながっていったものでもある。
ケニア生まれのフランス人。ソルボンヌ大学にて哲学およびフランス文学を専攻し、ケンブリッジ大学にて国際関係論のMPhilを取得。博士号(Ph.D.)も同大学にて取得後、カリフォルニア大学バークレー校においてジョージ・ルーシー招聘研究員として研究活動に従事。その後、シドニー大学に着任し、教育・研究に従事。コペンハーゲン大学客員研究員、ヘルシンキ先端研究所(HCAS)研究ディレクター、デンマーク国際問題研究所(DIIS)研究ディレクターを歴任。
著書に、Birth of the State: The Place of the Body in Crafting Modern Politics(オックスフォード大学出版局、2021年)(受賞歴参照)、The Power of Words in International Relations: Birth of an Anti-whaling Discourse(MITプレス、2008年)など。
研究成果は国際関係論、政治理論、社会学の主要学術誌に多数掲載されており、代表的な掲載誌として International Organization、European Journal of International Relations、Review of International Studies、Raison Politique、International Political Sociology、Body and Society、Millennium、International Theory、International Studies Perspective、および Global Environmental Politics がある。
最新著書 Birth of the State: The Place of the Body in Crafting Modern Politics(オックスフォード大学出版局、2021年)により、2023年国際関係学会(International Studies Association, ISA)「Best Book in the Discipline」賞および2023年イェール大学ファーガソン賞(歴史研究における最優秀書籍賞)を受賞。初著 The Power of Words in International Relations は、2009年ISAマーガレット・スプラウト賞(環境政治分野における最優秀書籍賞)において次席を受賞。加えて、2019年にはシドニー大学Teaching Awardを受賞。



