TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
61/66

59 これらの質問について,個々にお答えすることに代えて、今回のシンポジウムで編者が考えたことを述べることにしたいと思います。 研究者からの発信の必要性は大切です。ただし、科学者といえども多様な意見が想定され、社会がどう受け止めたら良いか、悩ましいところです。そのためにもグループボイスと言う提案がされました。加えて、科学コミュニティが積極的に発信すると言う姿勢を作ること重要だと考えます。 議論やとりまとめでも述べましたが、科学にも本質的に不確実性や確率性があり、また現在の科学もまだ途上であり、かつ同じデータなどを見ても解釈は科学者により異なります。そこで、科学者間では根拠を下にきちんと議論することは必要ですが、それでも異なる意見があることを科学者が認めて、社会に示すことが重要と思います。それは助言であり、責任を持って具体的な行動に移すのは政策決定者の仕事で、科学者は社会を巻き込んで分断に結びつけるべきではないと思います。 科学者が自身の知識を動員して事態の沈静化のために助言するならば、根拠を持ってその知識の示す範囲で助言することになります、一方、社会経済的な面はその専門家が自身の知識を動員して助言し、本来はそれらの助言を考慮して、政策決定がなされるのが筋だと思います。最初から専門家が様々な議論を考え合わせて助言をすると、何を根拠として何を判断したかが難しくなると思います。 様々な専門性に基づいた根拠をまず示すことは、より良い政策決定のために必要です。政策決定に当たっては、科学的な知見は理解した上で、社会の行動まで考慮する公衆衛生を考えるという段取りが重要と思います。もちろん科学的助言は一つの根拠で、絶対的なものではありません。 もちろん、科学者が社会の課題についてもっと目を向けるべきだというご指摘は真摯に受け止めます。

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る