TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
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47 に伸びたとすれば、その治療はエビデンスグレードAとされ、非常に強いエビデンスとなります。一方、このエビデンスグレードと推奨グレードは異なっていて、余命3カ月を自宅で過ごせたはずの人が、治療Aによって病院で非常に強い副作用とともに4カ月半過ごすことになれば、患者の価値観によってはその治療法は選ばれないことも当然あり得るので、推奨グレードは大きく下がります。 今回のコロナの問題が難しかったのは、中国が行ったように強制的にロックダウンすることが感染抑制に有効であることはみんな分かっているのですが、それと逆のベクトルとして人権や経済という全く異なる価値観がある点です。しかし、われわれは経済的見地に関して語るべき専門家ではなく、医学的にはこうした方がいいという提言をするだけであり、政治家が他の問題からの見知も集めて、最終的に責任を持って判断するのだと思います。 国際的な共同研究に関してですが、国によって制度が違っていて、日本のように緩い国から、中国のように強権的な国までさまざまです。私はアジア太平洋腎臓学会の理事長を務めていますが、アジア太平洋各国の対応について最適なものをまとめられるかという議論を各国の理事長としたところ、結局は国の制度が保険制度から含めて全く違うので統一見解は出せないという結論に至りました。科学的見知に基づいてこうした方がいいというものはありますが、地域によって可能なこと、医療資源によって、それから法律によって可能なことはそれぞれ異なるので、共通のものは出せずに終わりました。こういったことを他の分野の先生方はどういうふうに対応されるのか、ぜひ教えていただきたいと思います。 佐佐竹竹 確かに南学先生がおっしゃったように、地震学者は医師ほど一般の人々との対話はあまりないのですが、地震が起きるといろいろな対話はあります。素粒子などと比べれば、メディアの人や一般の人の関心は高いと

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