TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
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38 はこういうメリットがあり、こういうデメリットがあるということを定義し、かつそのような選択肢を複数示す。そして最終的に決定の責任を負うのは政治家だという言い方をしました。最終決定の責任まで専門家が負うわけにはいきません。というのも、ある政治決定をすれば、被害を受ける方に何らかの形で補償をしなければならないわけです。専門家は補償することまではできないので、それはやはり政治家が責任を負わなければいけません。その辺の責任の負い方の配分を「公論」では述べました。 それから、マスコミにも問題意識を持って捉えている方は結構いて、受け取る側の問題、発信する側の問題があり、そして発信する側には政治家と専門家がいます。毎日新聞のうがい薬の取材のときに記者が考えたことは、受け取り側も実は「ため」が必要ではないかということです。つまり、知事が言っていることは本当なのか自分で調べてみたり、他の人が何と言っているかを考えてみたりすることが必要ではないかというわけです。「ため」とは、何か情報が流れてきたらすぐにそれを信用して他の人に流したりせず、自分で考えるということです。 今のSNSの発達は、「ため」を作る能力に対して反対方向に向かっている傾向があります。LINEなどでもすぐに反応を求められる傾向があります。即答するときの思考と、何日か考えてから応答するときの思考はかなり違うのです。ですから、SNSの発達はそういう「ため」を作る力を人から奪っている可能性があります。その点を少し考えた方がいいかもしれません。 大大竹竹 本当にそうですよね。昔はよく、夜中に考えたことをすぐに発信するとろくなことはないと言われたので、まさにそういうところだと思います。

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