TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
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36 とは何とかしなければならないと思います。その点についてのご見解と、信頼性をどう得ていくかということについてご意見をお願いします。 横横山山 科学者の社会的責任としては、科学の質を担保することが必須条件だと思います。それをグループボイスで担保することが提案だったのですが、確かにご指摘のように、専門家が安心を社会に対して訴えたいという、非常に安心偏重の発信の仕方が大きな問題だと私も感じます。日本語では特に安全・安心という言葉が浸透していることもあり、安全基準を述べると同時に安心させなければならないという強いプレッシャーを専門家が抱え込んでしまっている傾向があると思います。 ところが、安心を誘導する人ほど不審がられる傾向があります。ですから私は研究者に「安心を誘導してはいけない」と常々言うのですが、それでも安心させたいという研究者側の欲求が非常に強いと思います。先ほどの信頼モデルでいうと、安心させるというのは意図の方を疑われるのです。心配は生きていくために必要な心の状態でもあり、無理に安心をさせると問題である場合もあります。ですので、研究者集団はそもそも能力が疑われるというよりは、常に意図が疑われるという傾向が非常に強いと思っています。 大大竹竹 佐竹先生、南学先生もそういうところでは非常に苦労されて、佐竹先生の佐竹論文2が既に出ていたのにそれが無視されたというのは非常に心外だったと思いました。特に医学の分野は、昔は黙って「大丈夫」と言っていれば医師は信頼されましたが、最近はインフォームドコンセントが進んでいて、手術一つ受けるにも詳しくリスクの説明がされます。逆に言えば、受ける側のリテラシーが高くないといけないとも思います。 2 佐竹健治・行谷佑一・山木滋「石巻・仙台平野における 869 年貞観津波の数値シミュレーション」(2008 年(平成 20 年))

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