TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
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25 の流れで間違った情報に被害を受ける可能性も高くなっています。インフォデミックの中、研究者は質の高い情報の迅速発信をする必要があります。特に理系の研究者は、通常、研究成果を査読論文にし、査読が通ってジャーナル等に掲載をされてから発信をします。しかし非常時、そのような余裕がありませんし、情報によっては査読論文に出す必要のない提言という場合もあります。情報を外にだすという猶予がない中、情報の質を担保するために同分野の数名以上のグループ、できたら学協会としての発信が重要です。 私は2011年の東日本大震災で、情報発信がいかに難しいか痛感しました。個人で活動をして失敗をする例も拝見しました。そうした中でも、非常に貴重な成功体験を幾つか見ています。特に、ウェブサイトで非常に簡潔に分かりやすくまとめた情報発信をした学協会がいくつもありました。 節電のため理学部1号館の非常に暗い部屋に物理学者や海洋学者たちが集まり、いかに放射線拡散の情報を発信するかというミーティングに参加したことを覚えています。そのミーティングが基になり、原子核物理の研究者たちが、福島の土壌の放射線測定の貢献活動を成功させました。学者たちが自ら手を挙げてグループを組み、コミュニティの中で貢献活動を自ら行おうとした事例です。東北大のグループが被災のため動けない中、大阪大学のグループが特に先導してまとめたことをよく記憶しています。こうした学協会や同じコミュニティ、さらにその中で常に行動を共にし、専門性が共通しているグループは危機時にも信頼できるデータを発出できることを間近で見ました。 そして現在はSNS時代であり、特にネットでは多様で大量な情報が迅速に出回っています。中にはミスリーディングなものも多いですし、意図的な情報発信もあって、インフォデミックの原因になっています。そういう中で、それぞれの行動に役立つ情報発信をいかに行うかを考えたときに、

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