TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
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23 が出される直前、「8割おじさん」といわれた西浦博氏は誠実なあっせん者として動いたと評価することもできます。そして四つ目がアドボケート(issue advocate)で、ある一つのことを主張するが故に一つの選択肢のみを提示する人のことです。 4. 東東日日本本大大震震災災ととCOVID-19のの違違いい 東日本大震災のときは、行動選択のための情報公開が行われていました。それは、自主避難をするかどうか、避難勧告に従うべきかどうか、放射線の分布などから判断しなければならなかったからです。こういうときには、学術会議は専門的情報公開の主体として強みを持ちます。なぜなら、いろいろなタイプの学者が入っているので、偏らない情報公開をすることができるからです。このとき、決定主体は主に個人でした。 ところが、COVID-19の場合には、行動選択のための情報公開ではなく、行動制限のための情報公開だったのです。外出制限をしたり、入国した人を2週間ほど隔離したりしたのは、とにかく行動制限のための情報公開でした。こういうときに専門的情報公開の主体として学術会議はあまり強みを持ちません。なぜなら、決定主体は個人ではなく、自治体や国、大学であれば総長だったからです。 今回、緊急事態宣言が出た後、西浦氏ら専門家にいろいろな批判が集まったのですが、それはなぜかというと、決定主体はあくまで組織の長であって、情報公開する側とは別だったのですが、専門家会議が決定主体と同様に振る舞ってしまったからです。東日本大震災のときは、個人がどういう行動を取るかを判断するために偏りのない情報が必要だったのですが、

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