TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
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9 2002~2003年に8000人が感染し、774人が死亡しました。その後、MERSが中東から現れました。これまでの感染者は2500人、死者数は851人ですから、3人に1人が死亡するという非常に重篤な疾患です。これに対し、COVID-19は全世界で3740万人が感染し、108万人が既に亡くなっています。従来の変異型コロナウイルスよりも格段に大きな問題になっていることが分かります。 COVID-19は、肺炎だけの問題ではありません。重篤な呼吸障害を及ぼす他に、医療崩壊によってその他の病気においても適切な医療を受けられなくなります。また、患者が病院に行くことを怖がることによって、受診を控えて適切な治療機会を逸することによる影響もありますし、在宅になることで生活習慣病が悪化するなど、さまざまなことで健康被害を起こしています。 さらに、インフォデミックが問題となっており、ミスインフォメーション(間違った情報)とディスインフォメーション(意図的に流される嘘の情報)が社会を混乱させています。アカデミアとしては、分かっていることとそうではないことを明快にし、分かっている情報を透明性をもって開示することが重要だと考えています。 医学系のPubmedというデータベースサーチによると、diabetic nephropathy(糖尿病性腎症)に関する論文は約3万5000本、昨年のノーベル医学・生理学賞の受賞対象となった低酸素誘導因子(HIF)に関する論文は約2万1000本、山中伸弥先生がノーベル医学・生理学賞を受賞するきっかけとなったiPS細胞に関する論文は15万本に上ります。これに対し、COVIDで検索すると約5万7000本の論文が出てきます。しかも、この5万7000本は2020年2月から現時点までに出された論文です。短期間にこれだけの数の論文が出るということは、実は質的に非常に問題の

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