TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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50 人人文文知知のの重重要要性性 しかし、そこにはやはり大事なものが欠けています。それは、人とは何か、社会とは何かを深く考えるヒューマニティズの視点です。それは、社会メカニズムという言葉では表現されえない大きなものです。今日の話で出てきた、トリレンマの3要素はそれに全て合致していて、それを新しいテクノロジーやデータ活用で支えていく必要があると思います。 現代においては、経済も社会も大きく変化します。日本は労働集約的な農業から、工業化によって経済大国になりました。これを資本集約型社会と言ったりします。私が総長になった当初、この社会がデータを使ってスマート化したときに、次は第3次産業で稼ぐようにするべきだといった議論がかなり横行していました。変化のスピードから見ると、日本の産業を2次から3次にシフトさせるのは無理だし、正しくないと感じていました。そこで気が付いたのは、デジタル・トランスフォーメーションをうまく使ってスマート化することにより、今まではコストパフォーマンスが悪くてできなかった個別のニーズに対応するための緻密な制御、例えばテーラーメード医療やオンデマンド生産などが合理的にできるようになる可能性があるということです。それは、多様な人々を誰一人取り残さないという、包摂的な社会を実現するツールともなりうるでしょう。しかし、本当により良い社会、正しい方向に向かわせるには、人とは何か、社会とは何かを同時に考えなければなりません。それが欠落するとデータ独占になってしまい、むしろ、修復しようのない格差が人類社会に生まれてしまうことになりかねません。

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