TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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47 東東大大ビビジジョョンン2020とと地地球球 私は、今社会経済が大きく転換していると感じており、その中で大学の役割を拡張していくべきであると、学内だけでなく外に対しても強く訴えています。従来の大学では、学生を育てて社会に送り出す、いわば人材の発射台としての機能が重要でしたが、今日の大学にはもっと違った役割が求められているということを、私自身、大学の運営全般に携わる中で実感していました。今日のディスカッションをうかがい、まさに大学の出番がきたということをさらに強く感じています。 私は2015年4月に総長に就任し、最初の半年間で「東大ビジョン2020」を策定しました。大学が新しい時代の要請にどう応えられるようにするのかをきちんと伝えるために、全学の構成員とじっくり議論しながらまとめました。そのキーワードは「卓越性と多様性の相互連環」でした。東京大学が目指すのは、まず学問的な卓越性、あるいは社会に対するリーダーシップという意味の卓越性です。それと同時に、学術に向かい合う活動の基盤となるのはキュリオシティ・ドリブン(好奇心主導)です。学問が楽しいというドライビングフォースは無限の力を持っていて、そこを損ねるようなことをしては大学の価値は出せません。そのことからも、多様性がもう一つの重要な軸となっているのです。 多様な活動からどのようにしてシナジー効果を出すかを考えたときに、構成員すべてに共通するビジョンが必要だと気づきました。そこで、共通するビジョンについて議論を進めると、ハードルがどんどん上がっていって、結局は「地球と人類社会の未来に貢献する『知の協創の世界拠点』の形成」に行き着きました。はじめは、このフレーズに「地球」は入っていませんでした。しかし、東京大学の知の活動は多様です。私が専門とする研究の中に、超高速の現象を分光学的に見ることが含まれていますが、、

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