TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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42 新型コロナウイルスはその課題を突き付けているのではないかという気がします。 星星 中島先生と同じ考えを異なる側面から話すのですが、一つはトリレンマというと三つのうちから二つしか選べないということになるので、それよりは三者のトレードオフと考えた方がいいと思います。そうすると、どうバランスを取るべきかということになります。 ある一時点での安全・経済・自由の関係を考えると、感染症を拡大させないためには経済活動を縮小するというトレードオフはあるかもしれませんが、時間軸を入れると実はトレードオフはないのではないかと思います。例えば300年前の日本と今を比べると、今の方が安全だし、経済的にも発展しているし、自由もあると思います。ですから、3者をそれぞれ高めていくことが一番重要で、中島先生がおっしゃったように、民主主義を鍛えていく、経済システムを鍛えていく、医療も含めたセーフティネットを鍛えていくという三つを同時に行っていくことが重要だと思います。 横横張張 安全・経済・自由という三つのキーワードを私の専門である都市計画の側から見ると、まさに西洋近代都市の形成史そのものだと思います。18世紀に市民革命が起きて、都市に市民という階層が発生し、まず自由が手に入りました。19世紀に入り、産業革命によって市民が自由の下で大衆的な経済を手にするようになりました。ところが、一方で経済が衛生環境の悪化や公害問題を生んだ結果、19世紀半ば以降に都市の大改造が起き、安全や安心を手にするようになりました。ところが、そのときの都市の大改造は、パリが非常に有名な例ですが、ナポレオン3世の統治下にあって、その命を受けたジョルジュ・オスマンという当時のセーヌ県知事がものすごい強権を使って、都市をわずか15年で造り替え、安全を手にしたわけです。

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