TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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37 ますが)の入った経済理論はいくらでもあります。それがGDPに入ってこないという問題は、いまから80~90年ぐらい前にGDPをつくる中心となった経済学者クズネッツが最初から指摘していたことです。みんな重要だと分かっているのに、いまだに家事労働がGDPに入ってこないのは、データの問題です。家庭のどんな活動にどれぐらいの時間を使っているのかというデータをきちんと集めていないためであり、ここでもデータの収集・分析・活用が重要だということになります。 アメリカでは家事労働、家庭生産の系列は20年ぐらい前から政府で作るようになっていて、そのうち通常のGDPに入ってくるだろうと思われます。少なくとも既にGDPと一緒に報告されています。日本ではまだそこまで行っていないので、これからの課題だと思います。 赤赤藤藤 利他性の研究が進む一方で、他人へのケアがデータ化しにくいというご指摘はとても面白いと思いました。データ化するときのプロセスに課題があるのだと思いますが、実は味埜先生への次の質問につながりますので、味埜先生にご質問します。 「SDGs」のセッションで福永先生が、科学的証拠や数字になる前の個別具体的な物語の必要性を説かれていたのがとても印象に残りました。個人のストーリーは具体的にどうすれば数字化できるのでしょうか。そもそも数字化することは必要でしょうか。というのも、数字化するときにはどうしても既存の分け方によって指標を立てます。しかし、既存の分け方に当てはまらない人々、例えばジェンダー、セクシャリティ、エスニシティなどの面で多様なバックグラウンドを持つ人は抜け落ちてしまいます。「誰一人取り残さない」というSDGsの基本概念がある一方で、数字化することによって置いていかれてしまう人が出てくるのではないでしょうか。どうすれば個別具体的な物語をSDGsの政策に反映できるでしょうか。

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