TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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28 羽羽田田 これから、東京カレッジ所属の若手研究者のお二人が、モデレーターの先生方に質問をします。最初にお二人について簡単にご紹介しますと、国際性を持つという点では共通していますが、ある意味で対照的な経歴ではないかと思います。 1人目は、赤藤詩織さんです。インドの高校を卒業され、イギリス、オーストラリアで学び、オーストラリア国立大学で博士号を取得。シンガポール国立大学でポスドク研究員をされた後、5月に特任助教として東京カレッジに赴任されました。専門は人類学で、特にジェンダーと環境に関心をお持ちです。2人目は、Flavia Baldariさんです。ミラノ大学を卒業後、大学院から東京大学にいらっしゃいました。法学政治学研究科で博士号を取得され、今年3月から東京カレッジの特任研究員をお務めです。専門は政治哲学です。 お二人から各先生方に個別の質問をし、少し議論を深めた後で、先生方全員に関わるような比較的大きなテーマについて意見交換を行いたいと思います。それでは、お二人からよろしくお願いします。 Baldari まず、南学先生へ質問します。南学先生は、インフォデミックという言葉を使われました。要するに、情報が多過ぎてどれが正しいか理解できなくなるということです。確かにメディアやSNSの雑多な情報が混乱を来す可能性は高いといえます。しかし、本日のご報告でも出てきた無症候性感染者に関する情報は、専門家の間でも意見や立場の対立が見られるようです。イタリアの例を挙げると、専門家が異なる意見を公の場で述べたときに混乱が生じたことがありました。もちろん早い段階でウイルスに関して理解できないことや不明なことが多いのは当然だと思いますが、それは医学・疫学の場合に限りません。ただ、研究を始めたばかりでまだ前後がよく分からないときに、専門家として情報を発信するのはとても難しいことだと思います。一方で、専門家の発言を判断の基準とする人々が

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