TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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22 よってゴール4の達成が脅かされています。就学機会がなくなったり、教育格差が拡大したりする問題に対して、手立てを打っていかなければなりません。そのときのキーワードが包括的教育(インクルーシブ・エデュケーション)です。従来は、教育機会の平等から取り残されてしまう人に対してヒト・カネ・モノをつぎ込んでサポートしてきましたが、緊急事態でできなくなってしまったので、緊急事態でも平時でもインクルーシブにいろいろな立場の人のことを考えた教育システムを普段から考えていかなければなりません。それが包括的教育です。その実現のためには変革が必要なところがたくさんあり、今後はキーワードとして「柔軟な学び」が大切だというお話もいただきました。 新領域創成科学研究科准教授の福永真弓先生には、倫理学・社会学の立場からお話しいただきました。福永先生が強調されたのは、科学的根拠や数字になる前の個別具体的な物語が必要だということです。データが大事である一方で、データだけに頼っていると見えなくなってしまうものがあります。例えば、高齢者や基礎疾患がある人のリスクが高いことは統計を見れば分かるので、データを基に政策を打っていかなければなりませんが、一人一人の患者はそこに至るまでに長いプロセスがあります。その中でいろいろな社会的脆弱性を経験しつつ今に至っているということを個別に見ていかないと、きちんとした対応ができません。福永先生は、SDGsが目指してきた社会のセーフティネットをもっと日常に埋め込んでいく努力が必要だということも指摘されました。 全体の議論を整理すると、幾つかポイントがあります。1点目に、SDGsが目指してきた世界とポストコロナ社会は重なる部分が多いということです。パンデミックがまた起こったときにどのぐらい抑えられるかというのは、SDGsをどのぐらい達成しているかに懸かっている側面が非常に大きいので、SDGsをきちんと指針にすべきだということです。

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