TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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14 や冗長性(リダンダンシー)に根差したこれからの新しい暮らしの在り方を展望するとともに、そうすることでインクルーシブな社会を形成するにはどうすればいいか、という議論をしました。 当日の議論のポイントは大きく三つありました。第1点は、デジタル技術が暮らしや社会にもたらす功と罪です。功としては、多くの方がディスタンシングをしても暮らしや業務が継続でき、わずか5年前であっても考えらなかったほど、非常にスムーズにバーチャルの世界に移行できたことは大きなプラスでした。また、多様な方の社会参画が可能になり、その結果として社会包摂につながる可能性が出てきました。従来は毎日決まった時間に決まった場所で決まった仕事ができることが大前提になっていたのに対し、デジタル技術の普及によって、子育て中の方、介護をしている方、さらには身体的、精神的にある種のディスアビリティを持った方々にも積極的な社会参画の機会を提供できる可能性が見えたことは、非常に大きなアドバンテージだったと考えられます。一方で、罪もあると思います。デジタル技術は、どうしても自分たちが見たいもの、見せたいものに集中しがちです。逆に言うと、ネガティブな面に触れる機会がどうしても減ってしまうという問題があると思います。あるいは、個としてのドメインがどんどん増えた結果として、共(パブリック)のドメインが減少し、それが社会の分断化につながってしまうことも懸念されるという指摘がなされました。 第2点は、多様性や冗長性をどう考えたらいいかということです。すなわち、社会の持続性(サステナビリティ)が最も高まるポイントとして、経済の効率性と多様性・冗長性のバランシングポイントがあるはずです。それを従来よりも多様性・冗長性が高い方にシフトさせるにはどういう方法があり得るだろうか。あるいは、多様性・冗長性は従来の経済学からは捉えにくく、無駄であることとの識別が難しい、そこをどうしたら克服で

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