TOKYO COLLEGE Booklet Series 6
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28 とについては、私は懸念を持っていたところです。例えば新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は非常に短期間にさまざまな提言を打ち出されて大変有効だったと思いますが、この種の問題についていえば、4月1日、22日、5月1日の三つの提言の経緯を見ても、およそ位置情報やスマホに入っているパーソナルデータなどをどのように使って、どのような対策を打っていくのかということについて、データの内容・性質・目的が混在するものが、必ずしも明確な説明のないままにいろいろと挙げられて、あれもやったらいい、これもやったらいいということが公式に発表されていきました。 専門家会議が非常に手探りだったことは私も承知しているつもりですが、プライバシーにセンシティブな側から見ると、コロナ対策という名の下に、なし崩し的に監視体制をつくっていこうとしているのではないかという懸念を持たせるものでもあります。このようなことについて明確な説明やサポートが政府全体としてあったのかどうかが懸念されます。 また、接触確認アプリの構想に当たっては、初期に複数の民間アプリが乱立するのではないかという議論がありました。そうであるとすると、相互運用性を確保することを含めた認証制度がないといけないのではないかといった懸念も持たれました。 後にGoogle・AppleによるBluetoothの機能提供がグローバルに示され、わが国もこれに乗っかることになりました。このアプリは、「場所と人」ではなく、あるいは「人・場所・人」ではなく、端末間の接触です。従って、「人と人」と同一ではありませんが、それに近いのです。人の接触について記録を取り、必要な場合に感染者と濃厚接触したことを通知する仕組みであり、プライバシーに十分配慮したものです。それから、本人の同意を前提とするという点で優れた仕組みです。しかし、Google・Appleによるアプリの提供に乗っかった接触確認アプリの検討の過程で、

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