TOKYO COLLEGE Booklet Series 6
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22 を見ることです。ブラックスワンとは、非常に稀なのですが、いったん起きてしまうと社会的なインパクトが大きい状況のことです。データは少ないのですが、そういった状況をシミュレーションで見ていくことが必要になると思います。ブラックスワンの影響を小さくする、もしくはブラックスワンが起きてしまったときの対策を設計するために、事前の失敗学というか、ネガティブなケースが起きたらどうするかということを考えることが必要になると思います。 ヨーロッパの例では、EUのフラグシップ研究プロジェクトで2016年から7カ国による国際体制が作られ、FuturICT2.0プロジェクトというものが始まっています。スマートテクノロジー(情報技術やIoTなど)とスマートシチズン(人間モデル、市民性など)を融合することによって、将来の経済の設計をすることを大きなチャレンジとして挙げています。幾つかサブチャレンジがあるのですが、例えばICTと社会科学をブリッジするようなチャレンジや、データ解析した社会モデル・集団モデルに対してシミュレーションもしくは制度の実験を行うチャレンジ、それからFinance 4.0といって、社会実装で何かしらのルールを決めていくようなことを目指しています。これによって、何かショックがあっても回復力が高く、環境に適応的な社会を設計することを目標としています。今回のコロナだけではなく、社会的に予想されないような「ブラックスワン」が起こる状況では、このようなデータ解析とシミュレーションの科学が必要になると感じています。 まだ構想段階ですが、われわれ東京大学が中心となってAI経済観測所をつくることを検討しています。さまざまな種類のデータを集めて、経済学、情報学、場合によっては心理学も含めた集団のモデルを作り、フォアキャストを含めた新たな経済指標を提供することで政策決定の支援につながらないかと考えています。

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