TOKYO COLLEGE Booklet Series 6
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19 1..ココロロナナ禍禍ででのの工工学学分分野野のの動動向向 1年間から数年間のさまざまな領域における社会的影響を分析したデータ解析やモニタリング、シミュレーションの研究テーマを集めてみると、工学系では大きく分けて人流・交通流、経済・産業・サプライチェーン、社会情勢に関する研究テーマがありました。一方、コロナ禍における工学分野の研究動向としては、人々の行動データの活用に関する研究が増えたと思います。特に、GPSによる位置情報データやソーシャルメディアのテキストデータを用いて社会動向を知る研究が増えました。 それらの研究は2種類に分けることができます。一つは、リアルタイムで直近の社会的な現状や経済状況を知るナウキャスト(nowcast)に関する研究が現在着目されています。ここでは大規模データ解析を中心とした内容となっています。しかしこれからは、より長期的に現在のコロナ対策の政策がどのような影響を与えるかといったフォアキャスト(forecast)の見方が中心になると思います。フォアキャストに関してはデータ解析だけでなく、シミュレーションや行動のモデリングが必要になると考えられます。 位置データを使ってリアルタイムで状況を見た研究の例としては、新宿駅に休祝日に来た人の数が前年度比でどう変わったかをGPSデータから取った研究があります。人々の行動データは、GDPの消費指数の減少幅に先行していることが研究で明らかになっています。さらに詳しく見ると、休日の来街者数がどの産業のマクロ経済指標と関係があるかというのが街によって違うのです。例えば新宿であれば娯楽業や飲食業と非常に相関が高く、浅草は小売業との相関が高くなっています。どのような行動データからどのリアルタイムの経済状況が分かるかということも明らかにしています。

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