TOKYO COLLEGE Booklet Series 5
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45 解決していこうとしています。そうした取り組みを国際的に訴える際には、どうしてもトップ外交でやらなければいけないので、もしかするとそういう側面ばかりが目立つかもしれませんが、いろいろな危ない現場に赴いてこその国連職員だと私は思っています。 福福永永 例えば国連が出すさまざまな目標設定は、本当に個々のストーリーがベースになって初めて出来上がってくるものだと思っています。人権一つ取っても、紛争解決一つ取ってもそうです。しかし、オルタナティブな経済にはどんなものがあるかとか、今の市場経済を回していくと究極的にどういうシナリオが見えるのかとか、どういう労働のパターンがグローバルな中で当たり前になってはいけないのかというのは、個別具体的なストーリーからはなかなか拾えないので、国連が出してくるレポートは俯瞰的な目線と個別具体的な目線とのせめぎ合いをしている印象が私にはあります。 私たちが拾っていくストーリーの中で、例えば先ほどの有機農業者のストーリーでは、グリーンエコノミーは定常型なのかどうか、グリーンニューディールとはどういうパターンがあるのかといった枠は、参照するところがないと振り返ることができないので、国連がバラエティを持った立場から大きなシナリオの設計をきちんと出すことはとても重要だと思うのです。しかも、国を越えていることがポイントだと思います。 先ほど沖先生がおっしゃっていたように、国とは何かということを考えると、国民国家という枠組みが古くなったのか、再生されようとしているのか、微妙に分からないところはありますけれども、国連はそもそも国同士に加えて、国ではない人たち同士の連帯だったはずです。沖先生の発表自体がそういうフレームでできていたので、私と沖先生が対立している印象は私にはあまりありませんでした。

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