TOKYO COLLEGE Booklet Series 5
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40 味味埜埜 われわれは数字を見ながら毎日、ああしようこうしようと言っているわけですが、その数字の一つ一つの裏にいろいろなストーリーがあるというお話や、その数字を取るにあたっては見えないところがあるという指摘は非常に強烈だったと思います。 まず沖先生に伺いたいのですが、「世界は呉越同舟であり、感染症に対して世界全体が強靭になる必要がある」とおっしゃっていて、世界中が協力することの重要性を指摘されました。一方、学術的・科学的な部分では協力が進んでいるものの、全体としては国家主義の台頭やSDGs実現の遅れを危惧されています。なぜそういうことになるのでしょうか。国同士の協力の仕方に課題があるということなのでしょうか。国連の立場でそういうことに関するスタンスのようなものがあるのでしょうか。 沖沖 国連の立場は本当にいろいろで、縦割りでさまざまな機関があって、それぞれの立場がありますが、国連全体として最も危惧しているのは、ワクチンが開発されたときにそれが世界のcommonsになるかどうか、みんながワクチンにアクセスできるようになるかという点です。 遅かれ早かれワクチンはできると思うのですが、全世界でいつでも安価に使えるようになるまでには時間がかかるでしょうし、そうなるまでの間の争奪戦というか、コロナに感染するのではないかというストレス以上の社会的ストレスが、国家間でも国家内でも起こるのではないでしょうか。そこでさまざまな格差が浮き彫りになって、こういう状況を見たときに、皆さんはどう思っているか分かりませんが、国とは何だろう、国境とは何だろうという根本的な問いを考えさせられるのです。 その国の国民であれば守らなければいけないけれども、そうでない人のことは後回しにしてもいいのかどうか。例えば、給付金のようなものを国籍に関係なく10万円を配ったりしていますが、逆に海外にいる日本人へ

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