TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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7 ような状態ではまったく営業できないことになるので、雇用は失われたままになるかも知れない。 シンポジウムから3ヶ月以上たった現在、経済状態は緊急事態宣言下に比べれば改善したようにも見えるが、まだ回復したとは言えない。新型コロナ感染症自体も第二波の拡がりを見せ、それがようやく終息しているかという所である。オンライン消費へのシフトの逆戻りもまだ始まっていないようである。倒産は、3月や4月には増えているように見えたが、このシンポジウムで指摘されたように5月に激減し、その後も例年に比べて増えてはいない。これから増えてくるのか、注目しなければならない。雇用の方も休業が大幅に増えたが、失業はやはりこれから増えてくるのかも知れない。 シンポジウムの登壇者が共通してあげたのは、コロナ危機のように事態が急速に動いている時に、経済状態をタイムリーに把握することの難しさである。GDPなどの最終値が明らかになるのは2年後くらいであり、速報値でも2か月くらいはかかる。雇用のデータなども1ヶ月遅れくらいである。最近では、Alternative Dataという、例えば民間の携帯電話会社などに業務上集まってくる大量のデータを、経済分析などに用いる場合が多くなっているが、このような動きがもっと広まって、経済状態をより早く正確に感知して、必要な政策などに反映させていくということが重要になるのだろう。 2020年10月 星 岳雄

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