TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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6 ははじじめめにに 2020年6月26日の午後、「コロナ危機を越えて」の第4回は、「経済」をテーマにした。緊急事態宣言の解除からほぼ一ヶ月が経ち、日常生活が、それは「新しい」という修飾語付きのものかも知れないが、徐々に取り戻されるかと思われていた頃である。その後やってくる「第二波」はまだ明らかではなかった。 日本では緊急事態宣言の最中でも欧米諸国のようにロックダウンが行われることもなく、経済活動が強制的に大きな制約を受けることもなかった。しかし、それでもコロナショックが経済に大きな影響を与えていることは明らかだった。人々は感染を恐れて外出を控えるようになり、買い物もオンラインに頼るようになった。多くの会社がリモートワークを急速に導入し、出勤しなくても業務が行える職種の人々は、混雑した公共交通機関での感染のリスクを減らすことができた。しかし、対面が欠かせない職種の人々は、生活(経済)と健康(安全)の厳しいトレードオフに直面することになった。また、コロナショックによって売上が激減した会社は、一部の従業員を解雇したり、休業を要請したり、もっと極端な場合は、倒産に追い込まれることになった。 シンポジウムでは、このようなコロナ危機のなかでの経済の状態について、意見が交換された。オンライン消費は、コロナ危機で新しく始まったわけではなく、いままでもオンラインで買っていた消費者がその量を増やしたに過ぎない、という指摘があった。状態が落ち着けば、また消費者は小売店に向かうようになり、オンライン消費へのシフトは短期的なものになる可能性もあるということだ。また、倒産や失業が、飲食業や宿泊業など、対面型の一部の産業に偏っているという指摘もあった。このような産業では、感染症対策を重視する「新しい生活様式」が定着すれば、以前の

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