TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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40 策対応が円滑に進んでいくと考えられ、これをいかに達成するかが今後の課題だと思っています。 宮宮川川 現状把握に関してデータが必要であることについては、川田先生と全く同意見です。特に企業側の議論に寄せて考えると、企業のリアルタイムでの業績把握が難しいことが、現状把握を難しくしている最大の要因となっています。では、どういう方法があるかというと、東京商工リサーチのような信用調査会社が日々集めているリアルタイムデータをしっかり使ったり、金融機関が保有する延滞に関するリアルタイムデータを参照したりすることが工夫としてあり得るだろうと思います。 その他に、政府部門に蓄積されている情報の中でも例えば通関データや税務関連のデータは、現状では残念なことに研究者向けに開放されていませんが、そういったものへのアクセスが進むことによって、期待されるデータの利用が実現されるのではないかと思います。ただ、この際考えるべきなのは、例えば、民間企業が好例だと思いますが、なぜそういうデータを研究目的や実態把握のために提供しなければならないのかということです。この点については、われわれが社会科学の文脈で行っているような研究をビジネス課題の解決にうまく当てはめることで相互に利益のある取り組みが展望できれば、ビジネス面でのデータ利用をより促進することができるのではないかと考えています。 こうしたデータの分析は、割とテクニカルに難しいところがあります。経済現象ですから実験ができるわけではないので、いろいろな物事が同時に決まっている中で、何が何を生み出しているのかをしっかり把握する必要があります。私も籍を置いているCREPEはそういうところにフォーカスして活動していると思いますが、経済学者が長らく関心の対象としてきた因果関係の識別ツールや発想を生かしていく余地は大きいのではないかと思います。

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