TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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38 対策の効果が大きいところに的を絞って対策していくことが重要だと思います。 その一つの例として、経済再開(リオープニング)の中でどういった産業を開けていけばいいのかということをお話ししました。同時に、止めることが難しい産業は大変だという問題点も浮かび上がっています。そういった意味では、院内感染に関して取り組むのはものすごく効果が大きいということが見えてくると思います。 重点を絞った対策としてもう一つ申し上げると、検査体制の強化は大事なのですが、その場合も一律ではなくて選択的な検査と隔離が有効であることを示した文献があります。具体的には積極的疫学調査(コンタクトトレーシング)と呼ばれるもので、感染の疑いが濃い者を検査することで、一律に検査するよりも圧倒的に費用が安く、感染者を隔離できることが幾つかの研究で示されています。そういうことで積極的疫学調査が第一義的に選ばれているのですが、そのときに一律の検査をさらに上乗せした方がいいかどうかはまだ分かっていないので、一律の検査までは行かなくても重点を絞った検査を広げていく方向に向かうことが大事だと考えています。 日本が積極的疫学調査を行うことができたのは、結核との長い闘いによって保健所の体制ができていたからです。国によっては、そうした土壌がないために積極的疫学調査ができないところもあります。ウィズコロナを考えていく上では、その国の長い歴史が非常に影響を持ってくるのです。何もかも簡単に変えられるわけではなく、渡辺先生のお話にも関係すると思いますけれども、変わらないものはたくさんあると私は思います。変わらないものは、これまで長く使われた制度の中で選ばれてきたものなので、ウィズコロナだからと思い付きで新しいものに変えた場合、制度に親和性

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