TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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33 渡渡辺辺 岩本さんのお話が示唆的で面白かったです。何が面白かったかというと、リーマンショックのような経済危機の場合は経済の犠牲を自ら進んで起こしたわけではありませんが、戦争や疫病の場合は経済の犠牲を自ら強いるものであり、コロナ危機の場合も経済の犠牲をある程度選んでつくり出してきた側面があります。 コロナ禍による経済損失は5%以上ともいわれるほど大きいわけですが、私が先ほど申し上げたように、コロナ禍によって例えば牛肉を食べるときのチャネルが変化しています。そのとき、レストランに行っておいしい牛肉を食べるのか、それとも素材を買ってきて家で調理して食べるのかという違いはあっても、基本的に牛肉を食べていることの効用としてはあまり変わりませんし、GDPもあまり変わらないと思うのです。元々マーケットで取引されていたのが家の中でのサービスに切り替わったものとして、家事労働のようなものも含まれると思うのですが、そういったものがもし評価されていないのであれば、GDPのマイナスは大き過ぎると思うのです。その辺はどのようにお考えですか。 それから、日本の場合、ロックダウンはありませんでした。政府が無理やり行動を縛ったというよりも、繁華街に出ると感染してしまうかもしれないという自分自身の判断の下で外食を控えたりしてきたように思います。自粛を誰かに強いられているというよりも、自分や周囲に対する健康被害を勘案した上で消費を抑えた側面が日本の場合は強いと思います。そうすると、極端にいえば日本政府が何もしなかったとしても、例えば緊急事態宣言を出さなかったとしても、それなりに自分を守ろうとして自粛して、その結果としてレストランなどでの消費が落ちたのではないかと思うのです。 だとすると、日本国民が自ら進んでそういう経済的なダメージをつくったということになります。そうした立場に立ったときに、岩本さんのよう

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