TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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22 分析上難しいところが一つあって、企業が倒産に至るまでにはプロセスが当然あって、売上が減ってなかなか支払いができなくなって倒産へと向かいますから、一足飛びにいきなり倒産しないのが一般的です。私は研究の一環として、金融機関に対する支払いの遅延が足元はどうなっているかというデータにアクセスできる機会があります。倒産という極端なケースに至る前兆を捉える上では適したデータだと思うのですが、数に関しては飲食や宿泊以外の業種でも遅延が増えている印象があります。ですから、面的な圧力が他の業種でもあり得るかという問いに対しては、倒産件数は今後増加していく可能性があるだろうということを示唆していると思います。 より重要な点として、コロナ前の業績と延滞の関係を見てみると、やはりつながりが弱くなっています。政策的な支援の効果もあり、状況は刻々と変わっていますが、先ほどの問いに戻ると、特定の業種に限らない面的な体質圧力が今後生じる可能性があると考えています。 星星 今後同じように大量の倒産圧力が生じるのかもしれないということですね。業績に関係なく大量の退出が起こるのは問題ですが、逆に業績の悪い企業が退出しなくなるのはもっと問題です。世界金融危機後の日本では、中小企業金融円滑化法に代表される政府の支援を行った結果、退出のメカニズムを弱めてしまったので、そういったことが今回も起こるかどうか、気を付けて見ていかなければならないと思います。

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