TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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21 星星 宮川さんに質問します。今回のコロナ危機では飲食業など特定の業種が、個々の企業のパフォーマンスによらずに面的な圧力を受けているということでしたが、特定の業種以外では従来どおりにパフォーマンスが悪い企業が退出の圧力を受けていたりするのでしょうか。それとも、退出のメカニズムはそこでも変わってきているのですか。 宮宮川川 退出のメカニズムについては、二つの視点でデータを見る必要があります。一つは、経済から受けたショックに対してどのくらいの数の企業の退出が起きているかというレベルの視点が大事だと思います。もう一つは、企業ごとに受けたダメージの程度にはもちろん違いがあり、従前のパフォーマンスにも違いがあるので、業績と倒産の発生がどういうふうに結び付いているのかというメカニズムが視点として重要だと思います。以上の2点を軸にして足元のデータについて触れてみたいと思います。 まず、飲食や宿泊以外の業種で何が起きているかというと、倒産の数という点では足元で目立って減少しています。もちろん裁判所の手続きの遅れなどいろいろな制度的な側面は指摘されていますが、実際、5月の倒産件数は衝撃的なほど少なかったことは押さえておくべきです。 一方で、コロナ危機前の企業パフォーマンスの高低と倒産発生の関係を見てみると、弱くなっているというのが私の印象です。これはあくまでコロナ前の企業業績ですから、足元で何が起きているかを見る必要があるのですが、アンケート調査の結果などを利用してコロナ後の各企業のパフォーマンスを参照してみても、月商が大幅に減少している企業が割と多く存在しているにもかかわらず、やはり倒産数は少ないのです。ある意味で不思議なことが引き続き起きていて、コロナ前のパフォーマンスで見ても、コロナ後のパフォーマンスで見ても倒産の件数が少なくて、かつパフォーマンスとの関係性が弱くなっている特徴が確認できます。

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