TOKYO COLLEGE Booklet Series 3
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30 いかにコントロール・把握していくのか、個人データをどのように利用していくのかという問題に必ずなってくると思います。これは政府だけでなくグローバルなプラットフォーム企業もそうなのですが、こういったものをどうやってチェックしていくのか、それに対して市民社会においていかにチェックするのかということが極めて重要になると思います。 今回の危機を通じて、多くの政治的指導者は戦争状態という言葉を使いました。私はこのことに非常に危機感を持っています。コロナに対応するのは非常に重大な課題ではありますが、決して国と国の間の戦争、個人と個人の間の戦闘関係ではありません。にもかかわらず、戦闘状態というメタファーが使われることを通じて、政治システムは今後肥大化していくのではないかという一定の危惧を持っています。政府が強制しなくても市民が主体的に協力することが大切で、それなしにコロナ禍は克服できません。むしろ市民の主体的協力を通じて、政府への信頼を回復することが極めて重要な課題になると考えています。 3. 考考ええるるべべききこことと その上で、私なりに考えるべきことを何点か申し上げたいと思います。第1に、ウィズコロナの社会において非常に難しい問題になってくるのは、安全・経済・自由のトリレンマだと思います。皆さんからご指摘があったように、今回非常に目立ったのは安全と自由のトレードオフでした。安全のためであれば個人の自由は制限されてもやむを得ない、というわけです。個人の自由をある程度管理してもいいから安全を確保してほしいというふうに、いわば国民の側から管理社会を求める声が上がりました。まさに、安全のためには自由が損なわれてもやむを得ないという議論が、さまざまな形で展開されました。

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