TOKYO COLLEGE Booklet Series 3
31/50

29 によっては誤った判断をした指導者に対して罰を下すことが、緊急事態に対応するための政治思想であり、知恵となっています。その点で私は民主的な指導者も十分に危機に対応することが可能であり、その際には事後的な検証が重要であるということを常に強調してきたつもりです。 そのため、価値の問題としては、果たして本当にコロナ禍を通じてわれわれは、独裁の誘惑に抗することができるのかということが問われていると思います。 2. 政政治治シシスステテムムのの論論点点 これも武田先生、小野塚先生がご指摘の点ですが、ペストやスペイン風邪を通じて政治システムが拡大してきました。先ほども武田先生がデフォーの話をされましたが、私が関心があるのは『政治算術』を書いたウィリアム・ペティです。ペティは人々の生命や人口を管理する学問を発展させたわけですが、結果的にこのような知とともに権力が拡大してきました。スペイン風邪の流行は第一次世界大戦後ですけれども、この時期以降、総力戦を通じて行政国家化が進んだわけです。こうしたパンデミックを通じて行政権が拡大してきたという過去の経験からして、今回どうなるのかということが注目されるところだろうと思います。 特に、人々の生命を管理する政治権力が拡大し、個人情報の広範な掌握が進んでいます。今回、ヨーロッパ型の対応がロックダウン(都市封鎖)というマクロな方法だったのに対し、東アジア型の対応は個人情報を追跡するアプリを活用し、個人の行動経路をたどって、場合によってはプライバシーを侵害してでもかなり強力に押さえ込むものでした。日本はむしろ後れをとっているといえるかもしれませんが、先々どうしても個人情報を

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る