TOKYO COLLEGE Booklet Series 3
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21 したがって感染防御対策としては、検査によって地道に感染実態を明らかにし、感染者を隔離する他に有効策はないと考えます。しかし、検査を徹底すると隔離しなければならない人が増えてしまいます。医療崩壊の議論も一部にありましたが、これも科学的には正しくないと考えます。無症状や軽症の人もいるのですから、隔離病棟以外で隔離する方法は十分にあり得たことであって、医療崩壊の危惧を理由としてPCR検査数を抑えることを正当化する理屈は全く成り立たないと思います。PCR検査数を減らしたからといって感染が減るわけではありません。見えない感染が増えるだけなのです。 新型インフルエンザ等特別措置法第32条によって緊急事態宣言が4月7日に出されましたが、緊急事態宣言は権力的な憲法停止ではありません。従って、本来的には移動の自由や営業の自由など人間の根源的な自由を侵害できないはずなのですが、実際には侵害するような自粛圧力がかかっていました。しかし、自粛 ―「自粛」とは英訳すると“voluntary restraint”という、主語の曖昧な妙な語になります― だから補償対象にはならないという無責任の円環構造の中にわれわれははまり込んでいます。そのことに緊急事態宣言という名前を与えて正当化するのはあまり望ましくないと私は考えています。 そうはいっても、政府は病気が蔓延することを恐れていたので、緊急事態宣言が出れば自粛要請に踏み切れると考えていました。自粛を期待する世論があったことも事実ですが、現在のこの政権は、これまでの数年間に事実を歪曲し、公文書を公開せずに隠蔽・改ざんし、国民が判断する権利すら蹂躙し続けてきたという悪行を繰り返しており、その延長上に「安倍的日常」とも言うべき無責任なコロナ対策を取っています。世論・国民もその体質に悪慣れしてしまっていることが危惧されます。

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