TOKYO COLLEGE Booklet Series 3
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17 まず、繰り返しになりますけれども、根拠の不明なオプティミズムでもなく、真実などないと決めつけるニヒリズムでもなく、正しく恐れることの重要性が改めて浮上したのではないかと思っています。 1665年のロンドンの市民は、もちろん私たちほど感染症の知識はありませんでした。しかし、私たちもまたコロナウイルスについて分からないことがあまりにも多いと思われます。それでもワクチンの開発がいずれ進むと信じたいですが、その前に私たちは長い不安な時間を過ごしていますし、これからも過ごさなければならないと思います。この時間をどう過ごすかという課題に応えることも必要ではないでしょうか。 そして、コロナ禍のような状況に対して、私が研究している文学に何かなし得ることがあるとすれば、先行きの見えない不安な時期に何をするかという問いに答えることが、その役割ではないかと思っています。 最近、教育現場などでも分かりやすさや実用性がものすごく強調されているように思うのですが、コロナ禍という事態に直面している私たちが考えなければならないのは、即効性や実用性だけを求める風潮を再考することではないかと思います。そうした風潮の考え方や生き方では、今回のような事態に対応する知恵はなかなか生まれてこないでしょう。ですから、英語教育などにしても、ひしひしと感じる実用性への圧迫のようなものを良い方向に転換して、危機に対して強い人間をつくるように、教育や社会の風潮が変わっていくべきではないかと考えています。それによって、災害が起こっても何かポジティブなものがつかめられればよいと思っています。

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