TOKYO COLLEGE Booklet Series 2
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38 横横張張 今回のシリーズの中でも、第5回はSDGsがテーマとなっていて、社会の多様性やレジリエンスの向上がSDGsの議論の中核をなす概念として語られることになるのではないかと思うのですが、大橋先生がおっしゃったように、経済合理性の観点からすると、それは「無駄」という概念と識別しづらい面があるとすれば、多様性や冗長性を認める社会を実現する方向に向かうことはできるのでしょうか。あるいは、そんなことはそもそも無理なのでしょうか。 大大橋橋 経済学の中で、冗長性をどう積極的に定義するのかという良い尺度が恐らく存在していないのだと思います。発表でも申し上げましたが、エクストリームなイベントをどう捉えるのかという構えが学問的にできていない可能性があると思います。 わが国は災害が多く、特に印象深いものとしては2年前の北海道胆振東部地震で戦後初のエリア全体での停電が起こったり、台風15号、19号によって洪水や大規模停電が起こったりしました。自然災害の直後は、インフラの冗長性が必要と言われながら、時間が経つと経済性が先に立って、無駄は省くべきという結論になりがちであることを公共の場での議論として多く見てきました。われわれがVRの技術を手軽に持ち合わせるようになれば、専門家がこの程度の確率でこれだけのエクストリームなイベントが起きるということをビジュアルにもっと頻繁に説得力のある形で見せられると思いますし、そうしたことが皆さんに認知されていくと、やはり冗長性を積極的に評価しなければならないという社会的なコンセンサスも出てくるのではないかと思います。 先ほど正常性バイアスの話がありましたが、人間は現実に見えるもの以外を想像することに対して結構苦手な動物だと思います。今ではビジュアルに見せる技術があるので、もしかするとICT技術の発展の中でもう少し

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