TOKYO COLLEGE Booklet Series 2
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22 ステファン・ブロードベリーの研究によると、イングランドの人口は1086年時点と比べて12~13世紀には2~3倍にまで増え続けました。 ところが、14世紀になると状況が大きく変わりました。14~19世紀は小氷河期といわれるような寒冷な時代だったとされています。地球規模の気候の大きな変化が13~14世紀に起こったのです。14世紀に始まる気候変動の兆候として有名なのが、1315年から1317年までヨーロッパ各地で続いた長い大雨です。記録がどこまで正確かは分かりませんが、それによってヨーロッパ中に大飢饉がもたらされたのは事実のようです。農産物がうまく育たないので食料不足になり、植物が育たないことで家畜も食料が足りなくなり、人々の飢饉につながりました。あるいは大雨によって河川が氾濫し、12~13世紀に沼地を干拓してできた耕作地が再び沼地に戻っていったこともあったようです。 こうした気候変動による非常に苦しい時代が14世紀に幕を開けるわけです。この大雨から30年後に起こったのが、黒死病ともいわれるペストの大流行でした。ペストは地中海の港町から入ってきた人の移動と関連して入ってきたといわれていますが、これによってヨーロッパの全人口の3分の1が亡くなったともいわれています(図4)。 もう1つ、人々の暮らしに追い打ちをかけたのは、ペスト大流行の10年前に勃発した英仏百年戦争です。100年間ずっと戦争状態だったという図4 14-15世紀のイングランドにおける人口減少

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