TOKYO COLLEGE Booklet Series 1
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24 で重症化しやすいのは、このあたりと絡んでいるのではないかと思います。また、ACE2は血管内皮細胞にも発現しており、これがCOVID-19の病態の特徴をつくっているのではないかと思います。 ACE2は、肺胞の2型細胞と呼ばれるところにたくさん発現しています。ですから、肺炎を起こすのですが、肺だけではなくて様々な臓器に障害を起こしています。肺胞には酸素を運ぶための毛細血管が無数にへばり付いているのですが、血管内皮に発現しているACE2を介して血管内皮にも感染し、血管炎を起こします。血管内皮が炎症を起こすと、そこに血栓ができやすくなることで、いろいろと病態を修飾していると私は考えています。 実際、COVID-19そのものがACE2受容体を介して細胞に侵入し、様々なところで炎症を起こしていることが分かってきました。血液はほぼ全ての臓器に行っていますから、この血管がやられると多臓器不全になります。それから、ACE2の発現とも絡むことですが、高齢者や喫煙者、基礎疾患のある人は重症化がハイリスクになると考えられます。 2. 適切な人工呼吸管理 先ほど南学先生がハッピー・ハイポキシア(幸せな低酸素)とおっしゃいましたが、これが一つの機序として考えられているのは、通常の肺炎などは、侵入してきた菌をやっつけるために白血球が寄ってきて、肺胞の中が戦いの場所になるわけです。そうすると、肺胞内が死んだ白血球やサイトカインのような炎症性物質、炎症性の液体で埋まってしまい、酸素を受け取ることができなくなります。こういう状態になると、肺自体はだんだん重くなります。ですから、肺炎で低酸素が進む人の場合、肺自体が非常に重くなっているので、患者は非常に息がしづらくなります。

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