TOKYO COLLEGE Booklet Series 1
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12 最近問題になっていることに、捏造の問題があります。6月2日にRetraction Watchが、ヒドロキシクロロキンという薬を検証した臨床研究に捏造があると指摘しました。さらにこれがThe Guardianに取り上げられ、NatureやScienceでも大きな問題と批判されました。ヒドロキシクロロキンは現在まで米政府が緊急使用を認めていたのですが、その根拠がなくなったため、昨日付(6月16日付)で使用を停止しています。 現在、パンデミックとともに問題になっているのがインフォデミックです。間違った情報(ミスインフォメーション)や意図的な嘘の情報(ディスインフォメーション)が世界中で問題になっています。われわれアカデミアの人間としては、分かっていることと分かっていないことを明確にし、透明性をもって現在の状態を開示することで、インフォデミックを収めることが義務であると考えています。 ワクチンの開発も喫緊の課題です。私が現在勤務している東京大学医学部は、前身がお玉が池種痘所という天然痘のワクチンを打つ施設だったのですが、天然痘はワクチンによって根絶され、1980年に世界根絶宣言が出されました。しかしながら、COVID-19に関してはワクチンの開発に6~18カ月、あるいはもっと長くかかるともいわれています。 生活習慣病も重大な問題です。COVID-19に対してさまざまな医療資源を全力で注がなければならない結果として、通常の慢性疾患の患者に対する医療が不十分になると指摘されています。フランスの調査によると、新型コロナウイルスが流行した途端、冠疾患集中治療室(CCU)に入ってくる心不全や心筋梗塞の患者が減ったそうです。要因は複数あり、医療崩壊で十分な治療ができない、患者自らが受診を控えてしまう、ステイホームによって生活習慣病が悪化してしまう、などのさまざまな要素によって、COVID-19以外の原因でも健康被害が大きくなっていることが懸念され

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